天然ガス備蓄法が議会で成立、暖房シーズンに合わせ一定水準の貯蔵義務化

ドイツの州政府代表で構成される連邦参議院(上院)は8日、天然ガスの備蓄を義務化する法案を可決した。天然ガスの安定供給確保を狙った同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、5月1日までに施行される見通しだ。

欧州では昨年秋以降、天然ガスの供給が不足し、価格が高騰している。最大の輸入先であるロシアからの供給が大幅に減ったためだ。露国営天然ガス大手ガスプロムはスポット市場を通して追加供給を行えば巨額の利益を得られたにもかかわらず、それを見合わせていたことから、ロシア政府が欧州に圧力をかける目的で意図的に供給量を減らした疑いが持たれている。これについてはすでに欧州連合(EU)の欧州委員会が市場支配的地位の乱用容疑で調査を開始した。

ドイツ政府は天然ガスの供給不足が今後、起こらないようにするため、備蓄義務化法案を作成した。貯蔵施設に対し暖房シーズンが始まる10月1日時点で毎年、容量の80%以上、12月1日時点で90%以上の貯蔵を義務化。冬の暖房需要で貯蔵量が減る2月1日時点でも40%ラインの維持を義務付ける。備蓄の義務は、国内のすべての天然ガス輸送事業者が出資する企業トレーディング・ハブ・ヨーロッパ(THE)が負うことになる。

ドイツの天然ガス貯蔵量は2日時点で国内容量全体の26.5%だった。ガスプロムが同国のレーデンとイェムグムに持つ貯蔵施設では貯蔵量の対容量比率がそれぞれ0.5%、15.8%と極めて低い。

ドイツには石油の備蓄制度は以前からあるものの、天然ガスにはこれまでなかった。ガスプロムの供給削減とウクライナ戦争の勃発でロシア依存のリスクが鮮明になったことから、政府はガス調達先の多様化にも取り組んでいる。

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