独フランクフルト検察当局は4月27日、スズキの独法人に立ち入り調査を実施した。ディーゼル車排ガス不正をめぐりEUの欧州司法機構(ユーロジャスト)が中心となって進める国際捜査の一環。同社のほか、同業ステランティスとサプライヤーのマレリ(旧カルソニックカンセイ)が対象となっている。
関連企業の拠点で立ち入り捜査が実施された。フランクフルト南部のベンスハイムにあるスズキの独法人のほか、同社の工場があるハンガリーのエステルゴム拠点、イタリア北部のコルベッタにあるマレリの拠点(カルソニックカンセイが2018年にフィアット・クライスラー・オートモービルズ=FCAから買収した部品大手マニエッティ・マレリの元本社)などが対象となった。捜査官は通信データ、ソフトウエア、計画文書などを押収した。
スズキに対しては、18年までに販売した「SX4 Sクロス」「スイフト」「ビターラ(日本名エスクード)」のディーゼルモデル計22万台強に違法な排ガス操作装置が搭載されていた疑いが持たれている。排ガス浄化機能が実際の走行で弱まったり停止したりし、欧州排ガス基準「ユーロ6」の許容値を上回る有害物質が排出される可能性があるという。
スズキは同エンジンをFCA(現ステランティス)、エンジン制御ソフトをマレリからそれぞれ調達していた。このため当該モデルを購入した顧客に対する詐欺、および違法行為のほう助の容疑が持たれている。
ステランティスは『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、「(子会社の)FCAイタリアは本日(27日)、スズキに供給したディーゼルエンジンに搭載された違法の疑いがあるとされる排ガス浄化ソフトウエアの機能について、フランクフルト検察当局のさらなる捜査との関連で情報と文書の提示を通告・要求された」ことを明らかにした。
ディーゼル車の排ガス不正容疑に絡んでは2021年11月にも、三菱自動車とステランティスが独検察当局の捜査対象となっていることが明らかになった。PSA(現ステランティス)が自社ブランドのプジョー、シトロエン、および三菱自向けに供給したエンジンに違法ソフトが搭載されていた疑いが持たれている。同ソフトは独自動車部品大手コンチネンタルが開発した。
欧州の自動車メーカーは独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正が15年に発覚するまで、ディーゼルエンジンの開発に注力していた。二酸化炭素(CO2)の排出量がガソリン車に比べ少なく、EUの厳しいCO2排出規制に対応しやすいと判断したためだ。
こうした事情を背景に、ガソリン車を主力とする日本メーカーは欧州で人気が高かったディーゼル車用のエンジンを欧州メーカーから調達してきた。スズキなどに対する当局の捜査はこれが裏目に出た格好だが、調達を決めた際に違法な機能がないかどうか調べていなかったとすれば、落ち度があったとの批判は免れない。少なくともVWの排ガス不正が発覚した時点で速やかに対応する必要があった。