ドイツ政府は4月27日の閣議で、物価高騰の直撃を受ける市民の負担軽減策を了承した。3月下旬の与党合意を受けたもので、コロナ禍からの経済回復に伴うインフレがロシアのウクライナ侵攻で加速していることに対処する。購買力の低下を相殺し、社会不安の発生を予防する考えだ。関連諸法案を議会に上程し、5月20日までに成立させることを目指している。
政府法案が施行されると、就労者にはエネルギー一時金300ユーロが支給される。被用者は給与とともに受給。自営業者は所得税の予定納税(税金の前払い)減額を通して受け取ることになる。同一時金には所得税が課されることから、手取り額は所得が多いほど少なくなる。
車両の燃料税も6~8月の3カ月限定で欧州連合(EU)の最低水準に引き下げる。引き下げ幅はガソリンで1リットル当たり30セント、軽油で同14セントとなる。
子持ち世帯には子供1人につき100ユーロの一時金を支給する。支給開始は7月。同手当は子供税控除に算入されることから、高額所得者はメリットを享受できない。
生活保護など社会保障給付の受給者には100ユーロの一時金を支給する。すでに100ユーロの一時金支給が決定していることから、当該市民への支給額は200ユーロへと倍増することになる。
政府はさらに、近距離公共交通機関の1カ月定期券を6~8月の3カ月に限り9ユーロとする意向だ。「9ユーロチケット」などと呼ばれる同定期券を購入した人は全国の近距離・地域公共交通機関をすべて利用できる。例えばデュッセルドルフの在住者がローカル線やバスを乗り継いでベルリンやミュンヘンに行くことできる。ICE、IC、ECなどの長距離鉄道、フリックスバスなどの長距離バスは利用できない。
基本的に日本の「青春18きっぷ」と同じ仕組みだが、適用対象がすべての近距離交通機関と広く、バスやトラムも利用できる点が異なる。料金的には激安と言える。
9ユーロチケットの販売に向けては全国共通のオンラインプラットホームが立ち上げられる。これを利用するとデジタル形式の定期券を入手できる。紙ベースの定期券は公共交通機関の自動販売機や窓口で販売される。9ユーロチケットは月単位で販売されるため、例えば6月29日に購入した場合は、翌30日までしか利用できない。
公共交通機関の定期券を予約購入している人は、当該月に限り料金が9ユーロに引き下げられる。自動引き落としの額が9ユーロとなる場合もあれば、差額が事後的に返済される場合もある。