垂直的制限に関する一括適用免除規則とガイドライン、6月1日付で改訂版発効

欧州委員会は10日、垂直的制限に関する一括適用免除規則(Vertical Block Exemption Regulation=VBER)および同規則ガイドラインの改正案を採択した。6月1日付で新規則とその解釈や適用の詳細を定めた新ガイドラインが発効する。

VBERは、サプライチェーンの異なる段階で事業展開する2社以上の企業間(例えば製造業者と販売業者など)で合意された「垂直的協定」に関するもの。競争を制限する恐れがある事業者間の協定は、EU機能条約(TFEU)第101条1項によって規制されているが(反競争的な合意の禁止)、当該協定が競争を制限することなく、製品の製造や流通を改善したり、技術的な進歩に寄与し、消費者にも恩恵を与える場合は一括して適用が免除される(同条3項)。

2010年6月に施行された現行規則は5月末に失効するため、欧州委は近年のオンライン販売の拡大やプラットフォーマーの台頭などに伴う市場環境の変化を踏まえ、2021年7月にVBERの改正案を発表。利害関係者からの意見募集を経て、新規則および新ガイドラインを正式採択した。

新規則では主として垂直的協定についてのセーフハーバー(あらかじめ定められた一定の基準や要件を満たしている限り、法令違反にならないとされる範囲)について見直しが行われた。具体的には二重流通(dual distribution)とパリティ条項(parity obligations)においてセーフハーバーの対象が縮小される一方、積極的販売制限(active sales restrictions)などではセーフハーバーの対象が拡大される。

二重流通とは、サプライヤーが自社の商品を販売店を通じて顧客に販売すると同時に、自らも直接顧客に対して販売するケースを指す。現行規則はこうした垂直的合意が小売段階における競争関係に及ぼす影響は相対的に小さいとして、製造段階で競合関係が存在しないことなどを条件に、TFEU第101条1項の適用を一括免除している。しかし、オンライン販売の拡大により、サプライヤーが自社のサイトやオンライン市場を介して商品を直接販売するケースが急増したため、新規則では垂直的協定の当事者の小売市場におけるシェアの合計が10%を超えない場合に限り、免除が適用される。

また、パリティ条項とは、自社の直販チャネル(自社サイトなど)で提供される条件と同等もしくはそれ以上の条件を契約当事者に提供することを事業者に義務づけるルール。現行規則では同条項も一括免除の対象となっているが、新規則ではオンライン仲介サービス業者がプラットフォームを横断して課すパリティ条項は対象から除外され、TFEU第101条3項に基づいて個別に評価される。

一方、積極的販売制限は、販売店による特定の地域または顧客に対する能動的販売を制限すること。現行規則では独占的販売システムで想定する販売店が1社のみで、積極的販売と消極的販売の定義もあいまいであることなどから、新規則では供給者がニーズに応じてより柔軟に商品の流通網を設計できるよう、適用免除となるケースを細かく指定している。

上部へスクロール