蘭INGの独法人が口座管理手数料をほぼ廃止、欧州中銀の利上げにらみ

蘭金融大手INGグループの独法人ING-DiBaは10日、欧州中央銀行(ECB)の歴史的な低金利政策を受けて導入した口座管理手数料を7月1日付でほぼ全面的に廃止すると発表した。ECBが中銀預金金利(市中銀行が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を引き上げる可能性が高まってきたことを受けた措置。中小の金融機関の間では口座管理手数料やマイナス金利の適用基準緩和がすでに始まっている。ドイツの大手銀のなかではING-DiBaが先陣を切った格好だ。

ECBは2014年6月、中銀預金金利をマイナスに設定した。当初はマイナス0.1%だったが、現在はマイナス0.5%に達している。

同金利のマイナス化を受け、ユーロ圏の金融機関の間には顧客の預金にマイナス金利を課したり、口座管理手数料を導入する動きが広がった。ドイツでは580以上の金融機関がそうした措置を導入している。

だが、製造業のサプライチェーンひっ迫やウクライナ戦争の勃発を受け、インフレ率が極めて高い水準に達していることから、ECBはすでに量的金融緩和の縮小を開始した。市場では中銀預金金利についても7月にマイナス0.25%へと引き上げるとの観測が強まっている。年末までには0%へと引き上げ、マイナス金利を終了するとの見方もある。

こうした事情を背景に資本市場ではすでに金利が上昇している。このため金融機関にとっては、資金を市場でなく顧客の預金で調達する魅力が再び高まっている。

ING-DiBaはこれらの変化を踏まえ、振替口座(Girokonto)とコール預金口座(Tagesgeldkonto)で口座管理手数料の適用対象となる残高をこれまでの「5万ユーロ以上」から「50万ユーロ以上」へと引き上げる。99.9%の顧客で同手数料がかからなくなるとしている。

『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、信用協同組合や地方銀行の間ではすでに同様の措置が始まっている。信用協同組合系のVRバンク・ミッテルフランケン・ヴェストでは残高5万ユーロ以上の個人顧客から徴収していた管理料を廃止した。

ING-DiBa以外の大手銀行はECBの決定を待っているもようだ。最大手ドイツ銀行は同紙の問い合わせに、口座管理手数料の適用対象となる残高の水準を変更する計画はないとしながらも、ECBが中銀預金金利を引き上げれば、それに合わせた措置を取ると回答。同金利がゼロになった場合は口座管理手数料を廃止することを明らかにした。大都市ベルリン、デュッセルドルフ、ハンブルク、ライプチヒの貯蓄銀行も同様の立場だ。民間2位のコメルツ銀行は「成り行きを注視している。金利上昇が持続的であることが確認された場合は対応する」としている。

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