欧州中央銀行(ECB)は9日にアムステルダムで開いた定例政策理事会で、国債などの資産を買い取る量的金融緩和を7月1日に終了することを決めた。また、7月の理事会で0.25%の利上げを実施する意向も表明した。利上げは2011年以来11年ぶり。物価の急上昇が続くなか、金融政策の本格的に正常化に踏み切る。
ECBは12月の理事会で、ユーロ圏で景気回復が続くなか、物価が急上昇していることから、金融正常化に舵を切ることを決定。「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置を3月末で終了した。4月にはコロナ禍前から実施してきた「資産購入プログラム(APP)」を7-9月期に打ち切る方針も打ち出していた。今回の理事会で7月1日に終了することが正式に決まった。
一方、政策金利に関しては、米、英など主要国の中銀の多くが引き上げに踏み切ったが、ECBは景気への目配りを重視し、慎重な姿勢を維持してきた。しかし、世界の多くの地域でコロナ共生が進み、経済が再開したことによる物価上昇がロシアのウクライナ侵攻で加速し、ユーロ圏の5月のインフレ率は前年同月比8.1%となり、過去最高を更新した。
ECBが同日に発表した最新の内部経済予測で、ユーロ圏の22年の成長率は2.8%となり、前回(3月)の3.7%から下方修正されたものの、インフレ率はウクライナ危機に伴うエネルギー価格の上昇などを見込み、5.1%から6.8%に引き上げた。ECBが目標とする2.0%を大きく上回る。23年は3.5%で、24年にようやく目標水準に近い2.1%まで下がる見通しだ。
こうした状況を受けて、理事会は7月の利上げを予告した。ラガルド総裁は5月下旬、主要政策金利を7月にも引き上げるとの見通しを示していたことから、予想通りの決定だ。さらに、9月以降に段階的に追加利上げする方針も打ち出した。9月については、物価動向に応じて「大幅」な利上げが適切だとして、0.5%の引き上げに踏み切る用意があることも示唆した。