イスラエルのスタートアップ、EV技術開発加速に貢献

●同国企業はハードやソフト、電子機器など幅広い分野をカバー

●政府は30年までに化石燃料車両の販売を禁止する目標を掲げる

イスラエルのスタートアップ企業が電気自動車(EV)技術の開発にしのぎを削っている。同国の新興企業情報サイト『スタートアップ・ネイション・ファインダー』によると、自動車技術関連のスタートアップの数は過去10年間で倍増し、その数は450社に上る。同国企業はハードおよびソフトウエア、電子機器やサービスプラットフォームなど幅広い分野をカバーしているのが特徴だ。国内におけるEVの利用も徐々に拡大しており、低廉な電力価格がそれを後押ししている。

コンサルティング会社BDOによると、今後4年間で同国を走るEVの数は21万5,000台まで増加し、ガソリン車からEVへの移行で世界をリードする可能性がある。ただ送電網などのインフラが十分整備されていないのが課題だ。

イスラエル政府は2030年までに化石燃料を使用する車両の販売を禁止する目標を掲げている他、50年までにカーボンニュートラル(気候中立)を達成しようとしている。政府の試算では25年までにEVのシェアは16%まで拡大する他、30年には新車販売台数の半数がEVとなる見通しだ。

エネルギー省が2021年に発表したレポートによると、EVの普及に対応するためには30年までに6万カ所の給電施設と1,000カ所の急速充電施設を整備する必要がある。導入済みの給電設備の数は両者合わせ2,500カ所にとどまっており、今後2億9,100万ドルを投ずる必要があると試算されている。

現地ウェブ紙『ザ・グロベス』によると、2022年1-5月期のEV販売台数は6,900台と自動車販売全体の5.2%を占めた。これは前年同期比を1.2%上回るに過ぎないが、今年末までにその割合は8%まで上昇すると予想されている。

昨年1-11月期のEV販売台数をメーカー別に見ると、5,280台の米テスラが全体の55%を占めた。次いで多かったのは中国の上海汽車集団(SAIC)で、主力EVの「MG ZS EV」が15.3%、同じく中国の愛馳汽車(Aiways)の「U5」が4.4%だった。

イスラエルはハードとソフトの統合や半導体、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)、レーダー、サイバーセキュリティ、LiDAR(ライダー)、衛星通信、機械視覚(マシンビジョン)、センサー技術に強みを持つ。そのため米GMや韓国の現代、ドイツのボッシュ、ダイムラーなど大手メーカーが同国企業にさかんに投資を行っている。

例えばスタートアップの「ストアドット」が開発した急速充電バッテリー「100i5」は、搭載した車両が5分間の充電で100マイル(約161キロメートル)を走行することができる。「100i5」の市場投入は2024年、他に2つの製品の販売を28年と32年に開始する予定だ。同社は今年、ボルボのベンチャーキャピタル子会社からの資金調達に成功しているが、ベトナムのEVメーカー、ヴィン・ファーストやメルセデスベンツ、オラ・エレクトリック、BPベンチャーズ、サムソン、TDK、EVEエナジーなどからも資金を集めている。

また同国のREEオートモーティブはEV生産のモジュール化を可能にするプラットフォームを開発している。同社は日本の日野自動車やカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナル、自動運転技術を開発するフランスのNavyaと提携している。

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