欧州委がウクライナとモルドバの加盟候補国認定を勧告、ジョージアは見送り

●「欧州委の歴史的な決定に感謝する」=ゼレンスキー大統領

●実際の加盟までは10年前後を要するのが一般的

欧州委員会は17日、ウクライナの欧州連合(EU)加盟に関する意見書を公表し、同国を加盟候補国として認めるよう加盟国に勧告した。これを受けて6月23~24日のEU首脳会議で協議される。全加盟国が同意すれば正式に加盟候補国の地位が付与され、加盟交渉入りへの道が開かれる。

ウクライナはロシアが同国への軍事侵攻を開始した直後の2月28日にEUへの加盟を申請した。欧州委は今回、3月3日に加盟申請したモルドバとジョージアについても意見書を公表した。モルドバについてはウクライナと同様、加盟候補国として認定するよう勧告する一方、ジョージアについては政治や経済分野の改革を進める必要あるとして、認定の勧告を見送った。

欧州委はウクライナについて、政治的基準に関しては、民主主義や法の支配、人権、少数民族の尊重と保護を保証する制度の整備などが十分に進んでいると評価した。経済的基準については引き続き経済構造改革を進める必要があるものの、マクロ経済の基盤や金融システムは安定していると指摘。法的基準についてもEU法の総体「アキ・コミュノテール」を受容し、効果的に実施するための要件を満たしつつあるとの見解を示した。

欧州委のフォンデアライエン委員長は記者会見で「ウクライナは欧州の価値観と基準を守ろうとする強い意欲と決意を示した」と評価。「ウクライナの人々にはわれわれとと主に歩み続けてほしい」と訴えた。

ゼレンスキー大統領は17日、ツイッターにコメントを投稿し、欧州委の勧告は「EU加盟に向けた道のりの第一歩であり、ウクライナの勝利を引き寄せるものだ。欧州委の歴史的な決定に感謝する」と歓迎した。

ただ、実際にEU加盟が実現するまでには長い道のりが待ち受ける。16日にキーウ(キエフ)を訪れたドイツ、フランス、イタリア、ルーマニアの首脳はウクライナに対する加盟候補国の認定を支持する立場を表明したが、オランダやデンマーク、ポルトガルなどは新たな候補国の認定に難色を示している。また、加盟候補国と認定されても、即座に加盟交渉が始まるわけではなく、認定に合わせて交渉開始の条件が課される可能性もある。加盟交渉では35の分野で個別の協議を進める必要があり、実際の加盟までは10年前後を要するのが一般的だ。

今回の動きに関連して、ロシアのプーチン大統領は17日、ウクライナのEU加盟を容認する考えを示した。北西部サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに出席したプーチン氏は、EUは「北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟ではない」ため、ウクライナの加盟に「反対はしない」と発言。そのうえで、ウクライナはEUの補助金に依存するようになり、EUの「半植民地」になると主張した。

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