特殊化学大手のエボニックは8日、ドイツ国内での供給不足が懸念されている天然ガスについて自社工場での使用を最大40%、他のエネルギー源に置き換えることができると発表した。生産に大きな支障は出ないとしている。クリスティアン・クルマン社長は「ロシアからのガス供給が止まった場合でもわが社の欧州拠点でのエネルギー供給をおおむね確保できる」と明言した。
同社が全世界で使用する天然ガスの量は年およそ15テラワット時(TWh)に上る。そのうちの3分の1強をドイツの工場が占める。他の国と異なり同国の工場はロシア産ガスへの依存度が高いことから、エボニックは同国産の供給停止に備え準備を進めている。
独最大のマール工場では新設のガス発電所で天然ガスの代わりに液化石油ガス(LPG)を使用する。発電設備の製造元であるシーメンス・エナジーが現在、LPGでの稼働試験を行っている。LPGはエネルギー大手bpのゲルゼンキルヘン製油所から供給を受ける。
マール工場では年末に予定していた石炭発電所の稼働停止を先送りすることも決めた。エネルギーの国内安定供給を確保するための法改正が行われたことから延長が可能になった。
エボニックの独工場はシュタイナウ、エッセン、クレーフェルト、リュルスドルフ、ヴェッセリングなどにもある。これらの拠点では天然ガスを石油で部分的に置き替える意向だ。
同社が節約した天然ガスは国の備蓄に回される。その規模は10万世帯強の年消費量に匹敵するという。