化学大手の独ランクセスは4日、原料などの調達と自社製品の販売に伴い発生する「スコープ3」レベルの温室効果ガス排出量を2050年までにゼロへと引き下げる目標を打ち出した。自社の活動で直接発生する「スコープ1」と、外部から購入した電気、熱、蒸気などの生産で発生する「スコープ2」のレベルについては40年までに炭素中立を実現する意向を2019年に表明済み。今回スコープ3の時程表を明らかにしたことで、同社はサプライチェーン全体の炭素中立目標を具体化したことになる。
スコープは温効ガスの排出を分野別に区分したもの。自社の活動で直接的に発生する温効ガスをスコープ1、間接的に発生するものスコープ2と呼ぶ。自社の活動の前後段階で他社が排出するもの(スコープ1とスコープ2以外のすべて)がスコープ3となる。
ランクセスはスコープ3の炭素中立実現に向け「ネットゼロ・バリューチェーン・プログラム」を開始した。同プログラムは「持続可能な原料の調達」「物流のグリーン化」「炭素中立製品の拡大」の3分野で構成。調達では植物とリサイクル品由来の原料、再生可能エネルギーで製造した原料を増やしていく。
物流のグリーン化に向けては、輸送計画の改善、貨物の積載効率向上、輸送手段間の連携の最適化、輸送距離の短縮などに取り組む。持続可能な動力源を用いる船舶の利用も増やす意向だ。
自社製品についてはカーボンフットプリント(CFP)を削減するとともに、すべての製品でCFPを数値化する。
これらの措置により、スコープ3の温効ガス排出量(二酸化炭素換算ベース)をまずは30年までに15年の2万7,000キロトンから1万6,500キロトンへと40%引き下げる。同社の炭素中立目標は、温効ガス排出削減に向けた国際共同イニシアチブ「サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)」から、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度未満に抑えるとしたパリ協定の目標実現に寄与すると評価されたという。