EUがロシア人観光客の受け入れ制限へ、加盟国がビザ取得円滑化協定の停止で合意

欧州連合(EU)は8月31日、プラハで開いた非公式外相会合で、ロシア人観光客の域内への受け入れを事実上制限することで合意した。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する制裁措置の一環。ロシア人へのビザ発給を大幅に減らし、EU加盟国への流入に歯止めをかける。

EUのボレル外交安全保障上級代表は会合後の記者会見で、ロシアから近隣のEU加盟国への入国が増加しており、「安全保障上のリスクになりつつある」と指摘。2007年にロシアと結んだビザ取得のための円滑化協定を停止することで一致したことを明らかにした。同措置により、ビザ取得のための手数料は現行の2倍以上の80ユーロに引き上げられ、手続きも煩雑化する。複数回の入国が可能な数次ビザの取得も困難になる。

EU域外との国境警備について加盟国間の調整などを行う欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)によると、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した2月末から8月下旬までの半年間に、陸路でEU域内に入ったロシア人は約100万人に上る。ボレル氏は円滑化協定の停止により、「新たに発給されるビザは大幅に減少するだろう」と述べた。

ロシア人へのビザ発給をめぐっては、ロシアに隣接するバルト3国やポーランド、フィンランドなどが域内への全面的な受け入れ禁止を含むより厳格な措置を求める一方、フランスやドイツは全面禁止に反対し、一般のロシア国民に事実上の制裁措置を広げるべきではないとの立場を表明。ギリシャやキプロスなど観光業に依存する南欧諸国も、厳格な対応に慎重な姿勢を示していた。

EU議長国チェコのリパフスキー外相によると、大半のEU加盟国を含むシェンゲン圏内を自由に移動できるビザがロシア人向けに約1,200万人分発給されており、欧州委員会が早急に具体的な対応策を検討するという。

ロイター通信によると、ロシアのグルシコ外務次官はロシア通信(RIA)の取材に対し、EUの対応を見過ごすことはできないと強く反発。「EU側が再び墓穴を掘るのであれば、それは彼らの選択だ」と述べ、ロシアとして対抗策をとる考えを示した。

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