7日の外国為替市場で英通貨ポンドが対ドルで急落し、一時1ポンド=1.140ドルと、37年ぶりの安値となった。トラス新政権が8日にエネルギー価格高騰に対応する家計支援策を発表するのを前に、インフレ抑制効果を期待する一方、大規模な公的支出による財政圧迫懸念がポンド売りの一因となった。
金融情報会社リフィニティブのデータによると、ポンドはサッチャー政権下だった1985年3月以来の安値となった。景気の先行き懸念に加え、新たな家計支援策で政府の借入額が1,000億ポンドを超えるとの観測があり、大きな財政負担が避けられないことから、ドル高の流れとも重なりポンド売りが加速した。
ドイツ銀行は、トラス政権が打ち出すエネルギー価格高騰への対応策と減税計画による財政負担が1,790億ポンドに達する可能性があるとの見方を示した。これは新型コロナウイルスへの対策費として同国が投入した公的支出の約半分に匹敵する。
イングランド銀行(中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ビル氏は7日の議会公聴会で、光熱費対策などによって物価上昇は短期的に抑制されるものの、大規模な財政出動によって物価を押し上げるほどの効果が出ることは望ましくないと指摘した。