ロシア政府が生産部門の国家統制の復活を検討している。現地紙ベドモスチによると、10月31日に開催された連邦会議(上院)で政府は、ソ連時代に計画経済の司令塔を担った国家計画委員会(通称「ゴスプラン」)に類似した新政府機関について、軍事産業と安全保障にかかわる分野を対象とする方針を明らかにした。計画経済の導入は特に対ウクライナ戦争での戦争遂行と長期的な安全保障の確保を目的としたものだとしている。
経済の国家統制に関わる議論が行われたのは31日に開催された上院の円卓会議で、産業貿易省が提案する「ゴスプラン2.0」が議題となった。『ベドモスチ』によると、同省は配布した文書の中で新しい「ゴスプラン」の役割を政府の軍需物資、すなわち対ウクライナ戦争と長期的な国家安全保障のための物資調達に限定する意向を示した。同省はそれにより国家統制を、国家が十分な情報を有し、工業関連企業に影響を及ぼすことができる分野に限定する一方で、生産の計画化の効果がバリューチェーン全体にもたらされるとしている。
中東欧専門紙『bne Intellinews』によると、プーチン大統領は最近になりミシュスチン首相を議長とする調整委員会を設立した。同委員会は政府と民間部門のリソースを戦争に集中することを目的としている。
ソ連時代の1921年に設立された国家計画委員会は経済五カ年計画の策定を担ってきた。連邦会議経済政策委員会のアレクセイ・シニツィン副委員長は、ソ連時代には計画策定のための計算能力が不足していたが、現在の技術水準であれば国家による計画策定は可能だと述べた。一方産業貿易省は、「ゴスプラン」は市場の価格シグナルなどの指標を無視するトップダウンの性格を持つと指摘している。
円卓会議では同国経済における政府部門の役割についても議論され、過去20年間で政府部門のシェアは倍増し経済の半分以上が既に国家統制の下にあるとの指摘がなされた。金融市場では政府が関与する企業の割合は2021年時点で時価総額の75.4%を占めている他、社債市場でも51%に上る。
一方で連邦政府の関係者は匿名で、政府は計画経済への移行を検討していないと述べ、国の予算執行の管理システムは効率的であり、現状に合わせて予算配分に柔軟性を持たせることは可能だと述べた。