欧州中央銀行(ECB)は16日、半年に一度の金融安定報告書を公表し、エネルギー価格の高騰と高インフレによる経済の下押し圧力が強まるなか、ユーロ圏の金融安定に対するリスクが高まっているとの見方を示した。急激なインフレや金利の上昇によって債務を抱える家計や企業は資金の返済が困難になり、中期的に金融機関の不良債権が急増する可能性があると警告している。
域内銀行の不良債権比率は低水準で推移しているが、報告書は企業収益の悪化などによって融資が焦げ付くリスクが高まっていると指摘。「金利の上昇に伴い銀行部門の収益性は回復しているものの、資産の質に悪化の兆しが見え始めている。貸し倒れに備えて引当金の積み増しが必要になる可能性がある」と警告した。
一方、各国政府はエネルギー価格高騰の影響を和らげるため、企業と家計向けに大規模な経済対策を実施している。しかし、新型コロナウイルス禍への対応のために巨額の財政出動を行った結果、政府債務残高が急増しており、一部で債務の持続可能性に対する懸念が高まっている。このため各国政府による財政支援は最も脆弱なセクターや低所得層に的を絞り、金融政策の正常化を妨げないものにする必要があると指摘している。
ECBのデギンドス副総裁は声明で「消費者と企業はすでにインフレ率の上昇や経済活動の縮小による影響を実感している。われわれの評価では金融の安定性に対するリスクが高まっており、ユーロ圏はテクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)の可能性が高まっている」と指摘した。