イタリアのデータ保護監督機関GPDAは14日、南部プーリア州のレッチェ市が顔認識システムを実験的に導入する計画を打ち出したことを受け、プライバシー保護の観点から当面はシステムの使用を認めることはできないとの判断を示した。警察による捜査や犯罪防止を目的とする場合などを除き、生体情報の取扱いに関する国内法が整備されるか、少なくとも2023年12月末までは顔認識システムの導入を見送るよう命じている。
EU一般データ保護規則(GDPR)とイタリアの現行法では、公益上の理由や公権力の行使に必要な場合、公的機関がビデオ機器を利用して個人データを処理することが認められている。しかしGPDAによると、自治体がビデオ機器を用いた監視システムを使用できるのは、政府との間で「都市セキュリティ協定(urban security pacts)」が締結されている場合に限る。レッチェ市は同協定を結んでいないため、直ちに顔認識システムを導入することはできないとしたうえで、導入の目的や法的根拠、採用したシステムの概要、アクセスするデータベースのリストなどを提出するよう求めている。
一方、イタリア中部トスカーナ州のアレッツォ市は12月から交通違反の取り締まり強化を目的として、12月から地元警察にスマートグラスを提供する方針を打ち出している。「赤外線スーパーグラス」と呼ばれる同デバイスは、赤外線カメラが撮影したナンバープレートから車両ナンバーを読み取り、国のデータベースと照合して瞬時に運転免許証の有効性などをチェックできる仕組み。GPDAはこれについて、間接的にせよ警察当局の活動を遠隔操作する可能性のあるビデオ機器の使用を認めることはできないとの見解を示し、レッチェ市と同様、デバイスの導入を当面見送るよう命じた。