電池製造の独ファルタは15日の決算発表で、車載電池工場の建設を見合わせることを明らかにした。経営陣は今回、業績不振を受けてコスト削減プログラムを打ち出しており、顧客の自動車メーカーから拘束力のある発注を受けるまで着工しない。
ファルタは昨年4月、「V4ドライブ」という名のリチウムイオン電池セルを開発したことを明らかにした。円筒形型で、直径は21ミリ、長さは700ミリ。急速充電器を用いるとわずか3分で80%充電でき、100%充電も6分で行うことができる。その際、セルの最高温度は35度にとどまることから、過度な発熱による電池の故障を回避できる。また、マイナス25度の低温でも高い性能を発揮する。
パイロット生産設備はすでに昨年末から稼働している。建設予定の工場は容量2ギガワット(GW)のギガファクトリー。最大5億ユーロを投じ2023年から生産を開始する考えだ。同社の確認を得た情報として経済紙『ハンデルスブラット』が昨年報じたところによると、高級スポーツ車大手のポルシェがV4ドライブを採用する方向という。
ファルタの22年1-9月期決算の営業利益(EBITDA、調整済み)は前年同期比63.6%減の6,636万ユーロと大幅に落ち込んだ。消費者の支出抑制を受け、ワイヤレスヘッドフォン向けコイン型電池の需要が減少していることが響いた格好。売上高は8.3%減の5億7,073万ユーロで、売上高営業利益率は前年同期の29.3%から11.6%へと落ち込んだ。
コイン型電池を手がけるノルトリンゲン工場では12月から来年4月末まで操短を実施する。正社員500人は勤務時間が最大80%減少。派遣社員200人は契約が打ち切られる。