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2022/11/30

総合 - ドイツ経済ニュース

ガス・電力料金上限ルール1月から適用、政府法案に節約促進のインセンティブ

この記事の要約

ドイツ政府は25日の閣議で、天然ガスと地域熱、および電力料金の一部を国が負担することを柱とする法案を了承した。消費量が一定限度以内であれば需要家が負担する料金に上限を設定する。エネルギー価格の急騰で圧迫されている家計と企 […]

ドイツ政府は25日の閣議で、天然ガスと地域熱、および電力料金の一部を国が負担することを柱とする法案を了承した。消費量が一定限度以内であれば需要家が負担する料金に上限を設定する。エネルギー価格の急騰で圧迫されている家計と企業財務の軽減を図る狙いだ。連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で法案が可決されれば、来年1月から適用される。期間は2024年4月末までの1年4カ月。

法案は天然ガスと地域熱を対象とするものと、電力を対象とするものからなる。

天然ガス・地域熱に関する政府の支援策は、一般世帯・中小企業を対象とするものと、エネルギー集約型企業など大口需要家を対象とするものの2本立てで構成。一般世帯・中小企業向けでは、今年12月の支払い分(同月の使用量ではない)を国が全額、肩代わりする法律がすでに成立している。

今回の閣議では年明け以降の負担軽減策が了承された。技術的な準備に時間がかかることから一般世帯・中小企業向け政策は来年3月に開始されるものの、1月1日にさかのぼって適用される。政府の諮問委員会は3月適用を提言していたが、州サイドが1月への遡及適用を強く求めたことから、政府は前倒しすることにした。

法案が施行されると、一般世帯・中小企業向けの天然ガスには1キロワット時(kWh)当たり12セント(地域熱は9.5セント)の上限価格が設定される。上限価格の適用対象となるのは、2023年の予想消費量(今年9月に算定済み)の80%で、12セントを超える料金部分を国が全額負担する。80%を超えた使用量部分は国の支援対象とならないことから、高額な料金を需要家がすべて自己負担することになる。節約度が高ければ料金負担をこれまでよりも引き下げることも可能な制度設計となっており、使用量抑制のインセンティブが働く。

政府はプレスリリースで、◇天然ガスの予想消費量が年1万5,000kWh◇従来の料金が1kWh当たり8セント◇新たな料金が同22セント――の世帯を具体例として挙げ、説明している。この世帯の月当たりの消費量は1,250kWh(1万5,000kWh÷12)。従来は料金が月100ユーロ(8セント×1,250kWh)だった。

使用量がこれまでと同じ1,250kWhで、国の支援がまったくないと仮定すると、毎月の支払額は275ユーロへと膨らむ(22セント×1,250kWh)。ただ、現実には予想消費量の80%に12セントの上限価格が適用されることから、実際の料金は175ユーロ(12セント×1,000kWh+22セント×250kWh)にとどまる。

消費量を仮に20%減らすと、高額なガス料金(1kWh=22セント)が適用されないことから、月料金は120ユーロ(12セント×1,000kWh)となり、従来料金(100ユーロ)からの増加額は20ユーロにとどまる。使用量を変えなかった場合(175ユーロ)に比べると、料金負担は55ユーロ低い。

節約した消費量はすべて1kWh当たり22セントで計算される。このため、上限価格が適用される80%では需要家の負担額が本来、同12セントにとどまるにもかかわらず、節約すれば22セントのキャッシュバックを得られ、金銭的なメリットが大きい。使用量を30%減らすと、月料金は92.50ユーロ(175ユーロ-22セント×375kWh)となり、従来(100ユーロ)よりも低くなる計算だ。

ガス消費量が年1.5メガワット時(MWh)を超える大口需要家向けには、使用量が前年実績の70%以内であれば1kWh当たり7セント上限価格を適用する。7セントを超える料金部分を国が負担することになる。上限価格が世帯・中小企業向けより5セント低いのは、税金と手数料が含まれていないためで、これらを加味すれば大口需要家向けの上限価格も12セントとなる。メーカーおよそ2万5,000万社と約1,900の病院が対象となる。大口需要家の使用データはガス会社が詳細に把握していることから、同ルールは遡及適用なしに来年1月1日付で実施される。

発電事業者に超過利潤税

電力料金の上限価格も1月1日から適用される。制度設計は天然ガス・地域熱とほぼ同じ。

一般世帯・中小企業では過去の使用実績の80%に相当する消費量に1kWh当たり40セントの上限価格が適用され、40セントを超えた料金部分を国が全額負担する。80%を超えた使用部分では需要家が高額な料金をすべて自己負担しなければならない。

従来の使用量が年4,500kWで、従来料金が1kWh当たり30セント、新たな料金が同50セントの世帯を例に説明すると、月使用量は375kWhで、料金は従来113ユーロだった。使用量がこれまでと同じで、国の支援がまったくなかったと仮定すると、毎月の支払額は188ユーロへと膨らむ(50セント×375kWh)。ただ、実際には予想使用量の80%に40セントの上限価格が適用されることから、料金は158ユーロ(40セント×300kWh+50セント×75kWh)にとどまる。節約度が高ければ高いほどメリットが大きくなるのは天然ガスと同じだ。

電力の年消費量が3万kWh超の大口需要家向けには、使用量が前年実績の70%以内であれば1kWh当たり13セント上限価格を適用する(送電料金・税・公課・分担金を含まない)。13セントを超える料金部分を国が負担することになる。

天然ガス、地域熱、電力の支援費用は総額2,000億ユーロの国営基金と、電力価格の高騰で巨額利益を得ている発電事業者への超過利潤税で賄う方針。超過利潤税は褐炭、原子力、廃棄物、石油、再生可能エネルギー発電に12月1日から適用される。石炭や天然ガス発電では免除される。

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