欧州委員会は13日、米国の「インフレ抑制法」への対抗策として欧州連合(EU)が検討している国家補助規則の緩和について、1月25日までに意見を提出するよう加盟国に要請した。欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)から加盟国宛ての書簡をもとに欧米メディアが報じた。
電気自動車(BEV)購入優遇策などを盛り込んだ米国のインフレ抑制法をめぐり、EU側は同法が再生可能エネルギーへの移行促進を目的としている点を評価する一方、米国内での生産に対する税控除や補助金交付により、BEV製造やグリーン技術を手がけるEU企業が競争で不利になる点を強く懸念している。欧州委は昨年12月、米政府の補助金措置でEU域内から米国に巨額の投資資金が流れる事態を防ぐため、EU国家補助規則を改正する方向で検討していることを明らかにした。インフレ抑制法の影響を受ける企業に対し、加盟国が迅速に税控除などの措置を講じられるようにすることが柱で、1月末までに具体策をまとめると説明していた。
ロイター通信によると、ベステアー氏は加盟国に宛てた書簡で、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰などが域内企業に与える打撃を軽減するため、国家補助規則を一時的に緩和して、補助金や優遇策の上限を引き上げることなどを可能にした危機対応の枠組みを拡充し、すべての再生可能エネ技術に適用可能とすることを提案。また、戦略的分野における生産設備への新規投資を促すため、税制上の優遇措置に関する新たな規定を設けることも想定していると明らかにした。ただ、一連の措置は投資が域外国に向かうリスクが実際に存在する分野に的を絞り、期間も限定する必要があるとしている。