欧州委員会は2月28日、米アップルが音楽配信市場でEU競争法に違反した疑いがあるとして、同社に異議告知書を送付したと発表した。音楽配信サービス業者がアップルのモバイル端末向けアプリ販売サイト「アップストア」を介してアプリを配信する際、他の購入手段をユーザーに周知するのを制限している点を問題視し、市場支配的地位の乱用にあたるとの疑いを強めている。アップルには反論の機会が与えられるが、正式に競争法違反と認定されると巨額の制裁金を科される可能性がある。
欧州委はスウェーデンの音楽配信大手スポティファイの申し立てを受け、2020年6月にアップルに対する調査を開始した。スポティファイはアップルが音楽配信アプリ市場における支配力を乱用し、アップストアで自社の定額制音楽配信サービス「アップルミュージック」と競合するサービスに不利な条件を課していると主張していた。
iPhoneやiPadのユーザーが外部の音楽配信サービスを利用する際、アップストアでアプリを購入するが、アップルはスポティファイなどの事業者が自身のウェブサイトなどでのコンテンツ購入を促す行為を制限する「アンチステアリング条項」を設けている。欧州委は同条項について◇アップストアの規約として「必要でも相応でもない」◇アップル製端末で音楽配信サービスを利用するユーザーにとって「有害」で、結果的により多くの負担を強いられる可能性がある◇「消費者の選択肢を狭め、音楽配信事業者の利益を損ねる ― ―と指摘している。
欧州委は音楽配信市場におけるアップルの商慣行をめぐり、21年4月にも異議告知書を送付している。当時はアンチステアリング条項の他に、配信事業者にアップル独自のアプリ内決済システムの利用を義務付けている点を問題視し、公正な競争をゆがめているとの予備的見解を示していた。今回は決済システムに関する見解を取り下げ、「もはや合法性について立場を示さない」と表明。今後は調査対象をアンチステアリング条項に絞る方針を明らかにした。ただ、取り下げに至った理由は説明していない。