永遠に残る化学物質と呼ばれるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の利用を原則禁止の方向で欧州連合(EU)が検討していることを、ドイツの主力産業が批判している。独自動車工業会(VDA)とドイツ機械工業連盟(VDMA)、独電気電子工業会(ZVEI)は3日付で共同声明を発表。PFASがなければ風力発電設備やリチウムイオン電池、電気自動車、半導体などGX(グリーントランスフォーメーション)に必要不可欠な製品を製造できないため、EUが目指す炭素中立を実現できなくなるとして、現実的な健康・環境リスクを踏まえた柔軟な規制にすることを要請した。
ドイツなど欧州5カ国は1月、PFASが環境に有害であるだけでなく、がんやホルモン機能障害、免疫不全を引き起こすとして、禁止する法原案を欧州化学物質庁(ECHA)に提出した。約1万種類に上るPFASの利用を段階的に禁止するという内容だ。
具体的には、代替物質確保の難易度に応じて、企業に18カ月~12年の猶予期間を与えて段階的に禁止する。医薬品、殺菌剤などに使われるPFASのうち、すでに厳しい規制が導入されているものについては禁止の例外とすることも提案している。26年または27年の施行を目指している。
PFASは幅広い分野の製品に使われる。5カ国はPFASを放置すると、利用が毎年10%のペースで増加し、環境、人体への悪影響が続くとして、EUに迅速な規制開始を求めている。
5カ国の提案は、ECHAが行うEUの化学物質規制「化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則(REACH)」との整合性審査を通過する必要がある。審査には1年以上がかかる見通し。審査が終わればECHAが欧州委員会に意見書を提出する。欧州委が規制は必要と判断すれば、EUレベルの正式な法案をまとめる作業に着手し、EU加盟国の承認を経て発効となる。
VDMAは5カ国の提案を5月に単独で批判した。今回はVDA、ZVEIとともに改めて懸念を表明。柔軟な規制を要請した。具体的には◇健康と環境への有害性が確認されていない物質についてはこれまで通り使用できるようにする◇有害な物質については安全な物質へと継続的に置き替えていく――を提案している。
VDMAのヒルデガルト・ミュラー会長は「それ(PFAS)なしでは現在、従来型の車両も未来の自動車技術も考えられない。(EUで)計画されているPFASの一律禁止は気候保護に(マイナスの影響もたらす)ブーメランとなりかねない」と懸念を表明した。ZVEIのギュンター・ケーゲル会長は、EUがアジア依存の軽減に向け半導体産業の強化に注力していることを踏まえ、「PFASの一律禁止はこの目標に相反する」と指摘した。