ドイツ連邦統計局が15日に発表した2023年の国内総生産(GDP、速報値)は物価調整後の実質で前年を0.3%下回った。マイナス成長はコロナ禍1年目の20年以来で3年ぶり。ルート・ブラント局長は「物価は最近の低下にもかかわらず依然として高水準にあり、景気を押し下げている。これに金利上昇に伴う融資条件の悪化、国内外の需要減少が追い打ちをかけている」と述べた。物価が大幅に上がったことから、名目ベースのGDPは6.3%増えた。
実質GDPを項目別でみると、個人消費(民間最終消費支出)は0.8%減となり、3年ぶりに落ち込んだ。高インフレを受けて消費者が支出を抑制していることが背景にある。特に前年に高騰した価格が高止まりしたり、一段と上がった商品分野で消費が大きく後退。白物家電では減少幅が6.2%に達した。
政府最終消費支出も1.7%減となり、約20年ぶりに縮小した。ワクチン接種や検査などコロナ禍対策の支出がほぼなくなったことが反映されている。
設備投資は3.0%増加し、3年連続で拡大した。企業向け電気自動車(BEV)購入補助金の8月末の終了を踏まえた駆け込み需要の効果で乗用車販売が増え、全体がけん引された。
建設投資は2.1%減となり、3年連続で落ち込んだ。金利の急上昇や建材費の高騰を背景に住宅市場が冷え込んでいるためだ。
内需全体では前年を0.9%割り込んだ。
世界経済の低迷を受け、輸出は1.8%減少した。ただ、国内需要が振るわず輸入が3.0%減とより大きく落ち込んだことから、外需(輸出-輸入)はGDP成長率を0.6ポイント押し上げた。
粗付加価値は実質0.1%減となり、2年連続で縮小した。鉱工業(建設を除く)はエネルギー産業と化学・金属などエネルギー集約産業の低迷を受け0.4%減少した。数値は示されていないものの、自動車は増加した。半導体不足の解消が進み生産が改善したことが反映されたとみられる。
建設業は0.2%増え、3年ぶりに拡大した。住宅需要の低迷で建築部門は減少したものの、土木など他の部門が増えて全体が押し上げられた。
サービスでは情報・通信が2.6%増と好調だった。流通・運輸・宿泊・飲食は消費抑制の影響で1.0%減少。企業向けサービスは0.3%増えたものの、伸び率は前年の2.6%から縮小した。
地方と社会保険を含めたドイツ全体の財政収支は827億500万ユーロの赤字となった。赤字は4年連続。エネルギー危機対策費がかさんだ。ただ、コロナ禍対策費が減ったことから、赤字幅は前年に比べ14.7%縮小した。
財政赤字の対名目GDP比率は前年の2.5%から2.0%に低下。同3%以内に抑制することを義務付けた欧州連合(EU)のルールを2年連続で遵守した。
赤字を計上したのは国(連邦)と市町村。市町村は難民の受け入れ数が大幅に増えたことから赤字に転落した。