自動車大手の独メルセデスベンツと中国・浙江吉利の合弁会社であるスマートが欧州
販売価格を来年にも引き上げる意向だ。中国製電気自動車(BEV)に対し欧州連合
(EU)が上乗せ関税の適用を開始したことを受けた措置。欧州事業を統括するディル
ク・アーデルマン氏は経済紙『ハンデルスブラット』に、EUと中国が年内に解決策を
取り決めなければ、1月から約2,000ユーロ値上げする見通しを明らかにした。
スマートは2019年、メルセデスの完全子会社から両社の折半出資会社へと改められ
た。現在は全モデル(BEV)を浙江吉利の子会社が中国で全量、生産している。
欧州委員会は中国製BEVが不当な公的補助を受け安値でEUに輸出されているとして、
最大35.3%の追加関税を11月から課している。これを受け、スマートでは関税が従来
の10%から28.8%へと引き上げられた。追加関税分を同社が負担し続けることはでき
ないことから、EUと中国が解決策で年内に合意できない場合は値上げを通して顧客へ
の転嫁を図る。
アーデルマン氏はまた、EUの追加関税を回避するため、生産の一部を中国から欧州に
移管する可能性があることも明らかにした。メルセデス「Aクラス」「Bクラス」の生
産停止に伴い過剰生産能力を抱える見通しの独ラシュタット工場を26年から活用する
ことや、受託製造事業者VDLネッドカー、ヴァルメト、マグナの協力を受けることを
視野に入れる。生産開始には1年半〜2年の準備期間が必要になるとしている。