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2015/9/25

総合 – 自動車産業ニュース

VW、ディーゼル車の排ガス試験で不正発覚・該当車両は世界1100万台

この記事の要約

独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は22日、ディーゼルエンジン車に搭載した不正なソフトウエアにより排ガス試験と実際の走行時で排ガスに含まれる有害物質量が異なるように操作したことが米国で発覚した問題について、世界で販 […]

独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は22日、ディーゼルエンジン車に搭載した不正なソフトウエアにより排ガス試験と実際の走行時で排ガスに含まれる有害物質量が異なるように操作したことが米国で発覚した問題について、世界で販売したエンジンタイプ「EA 189」を搭載した車両の約1,100万台が該当すると発表した。また、問題解決に向けたサービスなどの対策費用として、第3四半期に約65億ユーロの特別損失を計上し、2015年通期の利益目標も修正すると発表した。

発端となった米国では、環境保護局(EPA)が18日、4気筒ディーゼルエンジンを搭載したVWブランドとアウディブランドの2009~2015年式モデルで大気清浄法(CAA)に抵触する不正行為が確認されたと発表した。

EPAによると、対象モデルに採用された違法なソフトウエアは、排ガス試験中にのみ排ガス浄化システムの機能がフル作動し、通常の走行時には排ガス浄化機能が低下する仕組みとなっている。このため、試験場では排ガス基準をクリアするものの、通常の運転時には、窒素酸化物(NOx)の排出量が基準値の40倍になることもあることが判明した。排ガス試験は一定の手順で実施されるためソフトウエアが検知することができるという。

VWの「ジェッタ」、「ビートル」、「ゴルフ」、「パサート」およびアウディ「A3」の5車種(コンバーチブルなど含む8モデル)が該当し、2008年以降に米国で販売された約48万2,000台がリコールの対象となる。

メディア報道によると、米国での制裁金は1台あたり最大3万7,500ドル(約3万3,000ユーロ)、総額180億ドルに達する可能性がある。また、対象モデルを購入した顧客が集団訴訟を起こす可能性も指摘されている。さらに、今回の問題でVWが刑事責任を問われる可能性もある。

■ ヴィンターコルン社長が辞意表明

VWのマルティン・ヴィンターコルン社長は23日、今回のディーゼルエンジンの不正問題を受け引責辞任すると表明した。同社長は、「VWグループでこのような規模の不正が可能であったことに当惑している」と述べ、また、自身に不正行為はなかったと自負している、と言明する一方で、「VWは、人事においても、新たなスタートを必要としている。引き続き事態の解明と透明化に向けた取り組みを進めなければならない」と述べた。

ヴィンターコルン社長の辞意は、監査役会の主要メーンバーによる執行委員会が同日開いた会議で受理しており、25日の監査役会で正式に決定される見通し。執行委員会は後任について25日の監査役会までに提案する方針を示している。

ヴィンターコルン社長は2018年末まで2 年間、契約を延長することが内定しており、今回の不正問題がなければ25日の監査役会で契約延長が正式に決定される予定だった。

メディア報道によると、ヴィンターコルン氏の後任にはVW傘下の高級スポーツカーメーカー、ポルシェのマティアス・ミュラー社長が有力視されている。

■ 連邦政府、調査委員会を発足

ドイツ連邦交通省は今回の不正発覚を受けて調査委員会を発足させた。アレクサンダー・ドブリント連邦交通相(CSU)は24日、不正ソフトを搭載したディーゼルエンジン車は欧州市場にも流通していると説明し、対象モデルや台数については引き続き調査を進め公表する意向を示した。同連邦交通相によると、1.6リットルと2リットルのディーゼルエンジンが対象となるもよう。

今回の問題をめぐっては、経営陣がどの時点で問題を把握していたか、あるいは、何故、問題を掌握できなかったのかという点にも注目が集まっている。

メディア報道によると、VWは遅くとも2014年5月には不正ソフトウエアの問題を認識していたとされる。ウェストバージニア大学の試験で不正が発覚し、これを受けてVWは2014年12月に自主的なリコールを実施していたという。しかし、改めて米当局とEPAが調査した結果、問題が解決されていないことが判明したと報じている。

■ ディーゼル車全般のイメージ悪化も

VWの不正発覚は、ドイツメーカーが得意とするディーゼル車全般のイメージ悪化につながる恐れもある。ドイツメーカーはディーゼル車の販売戦略として「クリーンディーゼル」を謳い、イメージ改善に向けて協力してきた経緯がある。

今回の発表を受けてVWの株価は一時大幅に急落した。18日のEPAの発表後、VWの優先株価は21日の月曜日に19%落ち込み、翌22日にはさらに最高で23%下落し101ユーロに低迷した。全体で株価が35%近く下落し、時価総額は約250億ユーロ吹き飛んだことになる。

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