独自動車大手のダイムラーは20日、カーエアコンに使用する冷媒として2017年1月から、これまで採用を見合わせてきた新冷媒「R1234yf」を導入すると発表した。激しい正面衝突事故で同冷媒が燃える危険に対処する安全策を開発したという。これと並行して欧州では、2017年から「Sクラス」と「Eクラス」で二酸化炭素(CO2)を冷媒として使用するカーエアコンを先行導入する。
ダイムラーは2012年に実施した独自の安全性能試験の結果、新冷媒「R1234yf」は発火する恐れがあることが分かったとして、採用を見合わせる立場を明らかにした。同社は「R134a」を継続して使用する一方、CO2を冷媒として使用するための空調機の開発を進めてきた。ただ、CO2冷媒を2017年1月から全面的に導入することが困難なため、「R1234yf」とCO2を並行して導入する措置をとる。
欧州連合(EU)では2017年1月から、新型モデルだけでなく、継続生産車にも地球温暖化係数(GWP)が150以下の冷媒を新車のカーエアコンに使用することが義務付けられ、すべての新車が新しい冷媒規制の適用対象となる。
■ CO2冷媒に対応した空調機器を開発
CO2を冷媒として使用するためには100バールを超える高い圧力をかけるため、従来の車載空調機器を継続して使用できず、カーエアコンのすべての構成部品やチューブ、シールなどを新たに開発する必要があった。
このため、ダイムラーは、CO2を冷媒に使用するカーエアコンに必要な技術の開発に取り組むドイツ自動車工業会(VDA)の作業グループに参加し、その他のドイツ自動車メーカーや部品メーカーと協力して、さまざまなメーカーが使用できる標準的な部品を開発した。
CO2を冷媒として使用するカーエアコンは、「Sクラス」と「Eクラス」で先行して導入する。メディア報道によると、ダイムラーはその他のシリーズでは中期的にCO2冷媒を採用する方針を示している。
■ 「R1234yf」採用へ、安全措置を導入
ダイムラーは新冷媒「R1234yf」について独自に開発した安全性能試験を実施した結果、冷媒の回路に損傷があり、激しく正面衝突した場合、近くのエンジン部品の熱により冷媒が燃える恐れがあることを指摘していた。
2017年1月からは、「R1234yf」を使用するモデルには、激しい正面衝突時にアルゴンガスを発生させ、熱を持つ部品を冷却する装置を装備する。これにより、冷媒が燃える危険を回避する。
■ 背景
欧州連合(EU)は本来、2011年1月1日から域内で販売される乗用車の新型モデルを対象に地球温暖化係数(GWP)が150以下の冷媒を新車のカーエアコンに使用することを義務付けていた。
これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた「R134a」などの代替フロンに代わる冷媒として、現時点でこの基準を満たすのは米国のハネウェルとデュポンが共同開発した「R1234yf」のみだが、「R1234yf」の生産が需要に追い付かないことから、EUの欧州委員会は「R1234yf」の導入を2013年1月以降に延期した経緯がある。