欧州連合(EU)の欧州委員会は7月19日、中国が幅広い工業製品の原材料として利用される11種類の金属、鉱物の輸出を不当に制限し、EU域内の企業に悪影響を与えているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。中国の原材料輸出制限をめぐる通商紛争は3件目となる。
問題となっている原材料はグラファイト(黒鉛)、コバルト、銅、鉛、クロム、マグネシア、タルカム(滑石)、タンタル、スズ、アンチモン、インジウム。欧州委によると、中国は輸出に不当な関税をかけると同時に、アンチモンとインジウム、マグネシア、タルカム、スズについては数量も制限し、これらの供給で中国企業を優遇している。これはWTOのルールに反するもので、EU企業が重要な原材料の調達を阻害されているとして、提訴に踏み切った。
中国はこれらの原材料の主要産地で、たとえば潤滑油の製造、製鉄などに使われるグラファイトの供給量は全世界の3分の2を占める。化学品、充電式電池などの材料となるコバルトでも世界最大の供給国だ。
米通商代表部(USTR)は13日、中国が9種の原材料の輸出を不当に制限しているとして、WTOに提訴していた。欧州委の提訴を受けて、新たにクロム、インジウムを対象品目に加え、EUと足並みをそろえた。
EUは2012年から14年にかけて、レアアース(希土類)とボーキサイト、コークスなど9種類のレアメタルの輸出制限をめぐって中国を提訴。いずれも勝訴した経緯がある。
EU、米国と中国政府は紛争処理の第一段階として当事者間協議を行うが、60日以内に解決できなければ、WTOの紛争処理小委員会(パネル)で本格的に争うことになる。