欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、鉄鋼世界最大手のアルセロールミタル(ルクセンブルク)が伊鉄鋼大手イルバを買収する計画について、本格的な調査を開始したと発表した。競争上の懸念があるためで、改めて詳細な調査を行い、来年3月23日までに買収を承認するかどうかを最終判断する。
イルバは伊南部ターラントにある欧州最大級の製鉄所を運営する企業。同製鉄所から出る粉じんが周辺住民の健康被害を引き起こしたため、2012年に政府の管理下に置かれた。さらに競争激化で赤字が続いていることから、政府が15年に雇用維持のため国有化していた。
アルセロールミタルは伊製鉄会社マルチェガリア、大手銀行インテサ・サンパオロと共同で、イルバの民営化入札に応札。今年6月に落札し、同社を18億ユーロで買収することを決めた。
買収の可否をめぐる欧州委の初期審査では、イルバがアルセロールミタルの傘下に入ることで、南欧を中心に圧延鋼材など炭素鋼製品が値上がりし、欧州の自動車メーカーなど製造業を圧迫する恐れが浮上。これを受けてアルセロールミタルは10月中旬、競争上の是正策を提案したが、欧州委はなお問題があるとして承認を見送り、本格的な調査を実施することを決めた。