独産業用ロボット・機械設備大手のクーカ(KUKA)は11月26日、ティル・ロイター最高経営責任者(CEO)が12月に退任すると発表した。ロイターCEOの契約は、2017年春に2022年3月末まで延長されていたが、任期終了前に退任する。クーカは今回の人事の理由を明らかにしていないが、メディア報道によると、中国側がクーカの事業への影響力を強めようとしていることが一因と見られている。
クーカは2017年初めに、中国の家電大手ミデア・グループ(美的集団)の傘下に入った。ミデアはクーカに約95%を出資している。中国企業によるクーカの買収をめぐっては、ドイツの政界からも懸念が出ていた。
クーカによると、ペーター・モーネン最高財務責任者(CFO)が12月6日から暫定CEOに就任する。また、アンドレアス・パプスト氏が暫定CFOに就任する。
ロイター氏は2009年から約10年に渡りKUKAのCEOを務めてきた。クーカの事業再建を成功させ、自動車製造設備分野における主導的な地位を確立するとともに、産業のデジタル化を進める「インダストリー4.0」や協働ロボット(コボット)、中国における事業成長を推し進めてきた。
ロイター氏はCEO退任について、11月27日発行の独地方紙『アウグスブルガー・ツァイトゥング』に対し、「喜んで去るわけではない。悲しいけれども、前に進んでゆく」と心境を語っている。また、監査役会の従業員代表の役員が最後までロイター氏を支持してくれたとして感謝の意を示した。
クーカが美的集団の傘下に入った当時、ドイツの連邦経済相だったガブリエル氏(社会民主党:SPD)は、中国投資家によるクーカの買収に懸念を示していた。今回のロイターCEOの退任については、「ロイター氏は雇用確保や適切な経営の独立性の確保に力を尽くした」とコメントしている。