英国のメイ首相は12月17日、欧州連合(EU)離脱案をめぐる議会の採決を1月14日の週に行う意向を表明した。首相は当初、12月11日に採決する予定だったが、議会の承認を得られないことが確実な情勢だったため、前日に延期を発表していた。
EUと英国は11月、英国の離脱条件を定めた離脱協定案と、離脱後の双方の関係の大枠を定める政治宣言案について合意。EU側と英国議会の批准を経て発効することになった。
しかし、英国では強行離脱派、残留派の双方が離脱案に反発。与党・保守党内でも多くの議員が合意内容に反発していることから、メイ首相は採決の延期を迫られた。1月9日に審議を再開し、翌週に採決を行う。
強行離脱派が槍玉に挙げているのは、北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理問題をめぐる合意。EUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため、原則的に2020年12月末まで設けられる「移行期間」中に最終的な解決策で合意できない場合に、一時的な「バックストップ(安全策)」として、期限付きで英国が関税同盟にとどまり、関税ゼロなど現在と同様の通商関係を維持することになっている。
このバックストップについて強硬離脱派は、最終的な解決策を見つけるのは極めて難しいため、バックストップ措置が恒久化され、英国が事実上、関税同盟に残留する可能性があると猛反発している。
メイ首相は12月13日に開かれたEU首脳会議で、議会から離脱案の承認を取り付けるためEUに協力を要請し、EUは「バックストップが発動されるとしても、適用は一時的なものだ」とする声明を出した。しかし、EU側は離脱案をめぐる再交渉を否定。バックストップは一時的とする声明も、メイ首相が求めていた法的な保証ではなかった。このため、メイ首相は採決までにEUから法的な保証を得て、反対派の切り崩し工作を加速させたい考えとされる。
それでも議会の採決で過半数の支持を得ることができるか不透明な情勢で、離脱予定日の3月29日が迫る中、離脱協定を批准しないまま離脱する「合意なき離脱」が現実味を帯びている。英議会が離脱案を承認するメドが立たなければ、最終的な打開策としてEU離脱の是非を問う国民投票を再実施するという選択肢を選ばざるを得ない局面も予想され、英国内の残留派の間で国民投票の再実施を模索する動きも活発化している。