英国のメイ首相は2月20日、ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で欧州委員会のユンケル委員長と会談し、EUと合意した離脱案のうちアイルランドと北アイルランドの国境問題について協議したが、大きな進展はなく、協議の継続を確認するにとどまった。同日には英国で、与党・保守党の下院議員3人が首相の離脱方針に反発して離党を表明。離脱予定日の3月29日が目前に迫る中、メイ首相は求心力が一段と低下し、EUと妥協案をまとめて英議会の承認を取り付けることができるかどうか不信が高まっている。
EUと英国は、英国領の北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境を設けるのを避けることで合意しているものの、それをどのような仕組みで実現するかは決まっていない。昨年11月に合意した離脱案には、EUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため2020年12月末まで設けられる「移行期間」中に最終的な解決策で合意できない場合に、期限付きで英国が関税同盟にとどまる「バックストップ(安全策)」と呼ばれる措置を導入するが盛り込まれた。
しかし、英国内の離脱強硬派は、バックストップが恒久化され、英国が事実上、関税同盟に残留し、EUのルールに縛られることになるとして反発。下院で1月15日に実施された採決で離脱案が否決された。これを受けてメイ首相は、国境管理問題に関してEUから譲歩を引き出した上で、議会の承認を取り付けるという方針を打ち出した。
同問題をめぐるメイ首相とユンケル委員長の会談は、7日に続き2回目。メイ首相は離脱案について再交渉し、バックストップが一時的な措置であることを法的に保証する修正案をまとめることを求めているが、ユンケル委員長は前回に続いて拒否。EUと英国の将来の関係の大枠を定める「政治宣言」に英国側の要求に沿った文言を加える形で対応することを含む代替案について協議したが、結論は出なかった。
両首脳は会談後の共同声明で、「協議は建設的だった」とした上で、代替案をめぐる協議を今後も続けることで合意したと発表。月内に再び首脳会談を行うことを明らかにした。
保守党で離党したのはEU残留派の3議員。メイ首相がEUとの合意にこぎ着けるか否かにかかわらず、離脱を強行する姿勢を示していることに反発した。
英下院では最大野党・労働党でも、離脱問題に関してコービン党首と距離のある8人の議員が離党した。両党を離党した11人は新会派「独立グループ」を結成し、EU離脱の是非を問う国民投票の再実施を求めていくと見られる。