温暖化ガス「排出ゼロ」目標、首脳会議で合意できず

欧州連合(EU)は3月22日の首脳会議で、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にする長期目標について協議したが、一部の加盟国が「気候中立」(climate neutral)の達成期限を明示することに難色を示し、結論を持ち越した。6月下旬に開く次回の首脳会議で改めて協議する。

EUは地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた「パリ協定」に基づき、域内の温室効果ガス排出量を30年までに1990年比で少なくとも40%削減するとの目標を掲げている。同協定の締約国は、20年までに「21世紀半ば」までの長期目標を国連の気候変動枠組み条約事務局に提出するよう義務付けられており、欧州委員会はこれに沿って昨年11月、50年までに域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにして、気候中立な経済を実現するとの長期戦略を打ち出した。

AP通信によると、首脳会議ではフランス、スペイン、オランダなどが欧州委の提案に基づき、「50年までに気候中立を実現するとの野心的な長期戦略」での合意を呼びかけたのに対し、ドイツ、ポーランド、チェコは長期目標の達成期限を「50年」と明示することに難色を示した。その結果、首脳会議の総括文書ではEUとしてパリ協定を順守する姿勢を強調すると共に、「最新の科学的見地に照らし、世界規模で気候変動防止のための取り組みを強化する必要がある」との認識を示すにとどめた。

地球温暖化対策に関する国際会議「ワン・プラネット・サミット」の創設を主導するなど、自らを環境問題の牽引役と位置づけるフランスのマクロン大統領は記者会見で、気候変動防止に向けたEUの取り組みは「明らかに不十分だ」と指摘。今月15日に地球温暖化対策の強化を各国政府などに求める若者たちのデモが世界各地で一斉に行われたことに触れ、「われわれは目を覚まさなければならないが、まだその時はきていない」と語った。

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