フラウンホーファー・環境・安全・エネルギー技術研究所(UMSICHT)はこのほど、リチウムイオン電池と同水準の価格のレドックスフロー電池システムを開発したと発表した。レドックスフロー電池が高価格になる主因であった電池のスタックの重量を10分の1に削減し、大幅な生産コストの低減を達成した。同システムの製造・販売はUMSICHTのスピンオフ企業であるVolterionが行う。
UMSICHTによると、リチウムイオン電池は、サイクル寿命が短く、1日あたり2~3回の充放電を繰り返すと、2~3年で壊れてしまう問題がある。これに対し、レドックスフロー電池は、サイクル寿命が長い上、発火性の材料を使用していないため安全性に優れ、リサイクルが可能であるなどの利点があるものの、生産コストが高い難点があった。
UMSICHTの研究チームは、従来のスタックの各セルの厚みが8~10ミリメートルであったところを、2~3ミリメートルに抑えることで、リチウムイオン電池と同水準の価格を実現した。また、セルを接合する際に使用するシーリングリングも必要ないという。
新しいレドックスフロー電池は、例えば、下水処理場や病院にある磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)に使用できるという。下水処理場では、発生するメタンを電力に変えて蓄電し、処理場の電力需要に対応することができる。MRI装置は、電力消費量が大きく、3~4台を同時に使用すると電力網の負荷が急激に高まってしまう問題があるが、蓄電池を用いれば、電力網を増設しなくても使用台数を増やすことができる。
UMSICHTとVolterionは現在、バッテリーのコストをさらに低減する研究を続けているほか、用途の規模拡大にも取り組んでいる。現在は、100~300キロワットの電力を蓄電・供給できるが、将来はメガワット規模の電力にも使用できる電池を目指している。