ジョンソン英首相は13日、自身の参謀役で、英国の欧州連合(EU)離脱の立役者とされるカミングス上級顧問の解任を決めた。理由は明らかにされていないが、政権内の権力闘争が原因とみられる。EUに対して強硬な立場をとるカミングス氏が政権中枢から外れることで、難航するEUとの自由貿易協定(FTA)交渉で英側が姿勢を軟化させるといった観測が浮上している。
英メディアが一斉にカミングス氏の辞任を報じ、同氏は13日夜、首相官邸をあとにした。当面は自宅から残務処理にあたり、年末までに職を離れるという。11日には同じく首相側近のケイン報道局長も年末で辞任すると表明しており、一連の動きは政権の内紛が激化した結果とみられている。
カミングス氏は2019年7月のジョンソン政権発足時に上級顧問に任命され、政権運営で重要な役割を担ってきた。EU離脱の是非を問う16年の国民投票では離脱キャンペーンを主導したことでも知られる。ただ、官僚組織や議員を軽視するような言動から、政権内や与党・保守党の内部で同氏に対する不満が高まっており、最近はジョンソン氏との不仲説も報じられていた。
EU離脱に伴う移行期間の終了が12月末に迫るなか、FTA交渉では主要な争点となっている公平な競争環境や漁業権などをめぐる対立が続いており、協定がないまま新年を迎えて双方の通商が混乱する事態が現実味を増している。対EU強硬派のカミングス氏の辞任が決まったことで、英国が11月中の合意に向けて妥協するとの見方が出ている。ただ、官邸筋はこうした憶測を否定している。
首相報道官はカミングス氏の辞任が今後の交渉に影響するかとの質問に対し、「そういうことは全くない」と憶測を否定。「もちろん交渉をまとめたいと考えているが、英国の主権を尊重するという政府の立場に変わりはない」と強調し、月内の合意を目指して16日以降も協議を継続すると述べた。