新型コロナウイルスワクチンの供給が遅れたとして、欧州委員会が英製薬大手アストラゼネカを提訴している問題で、ベルギーのブリュッセル第一審裁判所は18日、アストラゼネカに対し、9月下旬までに累計8,020万回分をEUに納入するよう命じた。欧州委は6月末までに少なくとも1億2,000万回分を供給するよう求めており、命令はこれを大幅に下回ったが、欧州委、アストラゼネカともに裁判所の判断を歓迎している。
アストラゼネカのワクチンは米ファイザーやモデルナ製より安価で、しかも通常の冷蔵庫での保管が可能なことから、欧州連合(EU)でのワクチン接種の中心になると目されていた。昨年8月に締結した事前購入契約では6月末までに3億回分を供給することになっていたが、同社は3月、その3分の1しか供給できないと発表。4~6月期については予定の1億8,000万回分を大きく下回る約7,000万回分に減るとの見通しを示していた。
これに対し、欧州委はアストラゼネカが英国への供給を優先しているなどと批判。EUと結んだワクチン供給契約を順守してないとして、4月に同社を提訴した。
アストラゼネカは3月末時点で3,020万回分をEUに納入している。裁判所は同社に対し、7月26日までに1,500万回、8月23日までに2,000万回、9月27日までに1,500万回を納入するよう命じた。供給できなかった場合、1回分につき10ユーロの罰金が科される。
裁判所の命令は、欧州委が要求していた供給量を大幅に下回ったが、フォンデアライエン委員長は声明で「アストラゼネカがEUとの契約を履行しなかったとの主張が認められた」と強調。一方、アストラゼネカは供給量、納期とも欧州委の要求が退けられたことで、事実上の勝利を宣言。そのうえで、EUへの供給量は「6月末までに8,020万回を大幅に超える」との見通しを示した。