欧州委員会は7月27日、英国の欧州連合(EU)離脱協定違反をめぐる法的手続きを凍結すると発表した。EUと英の対立激化を避けるため、とりあえず手続きを停止し、話し合いによる解決を模索する。
英政府は3月3日、EU離脱に伴って北アイルランドで物流が混乱している問題に対応するため、北アイルランドのスーパーなどに英本土から入る食品などの複雑な通関・検疫手続きを免除する「猶予期間」を3月末から10月1日まで延長すると発表。これに対してEU側は、一方的な決定で離脱協定に反するとして、法的手続きに着手していた。
英政府は7月21日、北アイルランドをめぐる問題を抜本的に解決する必要があるとして、離脱協定の「北アイルランド議定書」に盛り込まれた関連ルールの見直しをEUに要求。交渉が決着するまで猶予措置を継続することも提案した。
EU側は直後に、「議定書の枠内」での問題解決に向けた協議には応じるものの、議定書そのものの見直しは受け入れないと発表した。これに対して英国側は、離脱協定の特別条項に基づく権利を行使し、一方的に議定書の取り決めの一部を履行しないことも辞さない構えを示しており、英の離脱を機に冷え込んでいる双方の関係が一段と悪化する恐れが出ていた。
こうした状況を受けて、欧州委の報道官は27日、法的手続きを凍結した上で、英国の要求内容を検討する意向を表明した。ただ、議定書の見直しには応じない姿勢を堅持している。