EUで医療緊急事態対応の新機関発足、コロナ禍の反省踏まえ

欧州連合(EU)で16日、感染症の大流行など公衆衛生上の危機に対応する新機関「医療緊急事態準備対応庁(European Health Emergency preparedness and Response Authority=HERA)が発足した。新型コロナウイルス感染拡大へのEUレベルでの対応が遅れた反省を踏まえたもので、将来の新たな危機への準備を進めると同時に、危機が生じた際の対応を主導する。

HERAは欧州委員会が管轄する新機関。2022年初めに本格的に始動する。日頃から情報を収集し、コロナ禍のような非常事態が起きるのを早期に予測して準備する役割を担う。域内での新薬の開発、臨床試験を各国が連携して実施できる体制も整える。このほか、医療用手袋、マスクなどの備蓄も進める。

危機が生じた際は迅速に対応策を決め、実行に移す。必要な医薬品など医療資材の開発、生産、調達、加盟国への配分を調整することなどが含まれる。

同機関の運営や研究開発(R&D)、調達など必要となる資金に関しては、EUが中期予算から60億ユーロを拠出する。EUが運営する複数の基金も拠出する予定で、27年までに総額300億ユーロ程度の資金を確保できる見込みだ。EU各国や民間企業による支援を含めると500億ユーロを超える可能性もある。

EUはコロナ禍の当初、各国が場当たり的に対応し、結束した行動をとれなかったため、ワクチン確保で米、英などと比べて出遅れるといった苦い経験を味わった。こうした状況を改善するため、欧州委のフォンデアライエン委員長は20年9月に行った一般教書演説で、次の危機にEU全体で対応できる体制を整備する必要があるとして、新機関設立を提唱していた。

EUには関連機関として欧州医薬品庁(EMA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)があるが、欧州委のシナス副委員長は記者会見で、両機関は主に危機発生後にしか機能しないとして、準備機能を持つ新機関創設の意義を強調した。

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