欧州連合(EU)はエネルギー価格の高騰が域内の経済や家計に深刻な影響を与えている現状を受け、加盟国がEUルールの範囲内で講じることができる共通のアプローチを検討している。欧州委員会は13日に加盟国が取り得る対策をまとめた「ツールボックス」を提示する方針で、これを土台に今月下旬のEU首脳会議で短期的な対応策について協議する。
EUでは新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う需要の高まりなどを背景に、天然ガスの価格が高騰しており、これが電気やガス料金の値上がりを招いている。気候変動対策で各国が脱炭素政策を進めていることや、再生可能エネルギーの不安定さも天然ガスの需要を押し上げる要因になっており、冬場に向けてさらに需給がひっ迫する可能性も指摘されている。
欧州委員会のシムソン委員(エネルギー担当)は6日、欧州議会でエネルギー危機の現状について説明を求められ、EU域内における天然ガスの備蓄水準は過去10年間の平均を下回っているものの、冬季の需要には対応できると強調。そのうえで「エネルギー価格の高騰が市民生活に及ぼす影響を軽視することはできない」と述べ、各国政府はエネルギー貧困に陥るリスクが高い世帯や、経営基盤が弱い中小企業に対する支援策を早急に検討する必要があると指摘。EUルールに抵触せずに講じることができる対策として、最も脆弱な世帯に対する補助金のほか、エネルギー税の見直しや長期供給契約の推進などを挙げた。
一方、欧州委のフォンデアライエン委員長は5日、エネルギー価格の高騰にEU全体で対処するため、今月下旬のEU首脳会議で天然ガスの戦略的備蓄について協議する方針を示した。訪問先のエストニアで記者団に語った。
同氏は「EUはガス需要の約90%を域外からの輸入に依存している。コロナ禍からの経済回復に伴い世界的に需要が急拡大する一方、供給は増えていない」と指摘。エネルギー資源の輸入依存度を低減して価格を安定させるため、EUは再生可能エネルギーへの投資を拡大する必要があるとしたうえで、より短期的な対策として、戦略的ガス備蓄について検討する考えを示した。