英政府は8日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を受けて、イングランドで行動規制を強化すると発表した。在宅勤務の推奨、マスク着用義務の拡大などが柱となる。ロックダウン(都市封鎖)の再実施は避けながら感染拡大のペースを抑え、ワクチン追加接種(ブースター)が進むまでの時間を稼ぐ意図があると目される。
英国の人口の大部分を占めるイングランドでは、7月にほぼすべての行動制限が解除された。その後に感染者が急増したが、政府はコロナと共生しながら社会・経済活動を正常化する道を進んでいる。オミクロン株の感染が急速に広がり、8日までに国内で568人の感染者が確認されたことから、規制強化に踏み切った。
マスク着用は11月末から店舗内と公共交通機関で義務付けられていたが、10日から屋内の公共施設でも義務化となる。13日から在宅勤務を基本とする。このほか、ナイトクラブや大人数が集まるイベントで、ワクチン接種証明書の提示を義務付けることも決めた。
規制強化には与党内からも共生路線からの逸脱として批判する声が出ていた。しかし、政府はオミクロン株の実際の感染者は確認例の20倍を超えているとして、医療ひっ迫が深刻化するのを防ぐため、実施に踏み切った。
英政府は既存の新型コロナワクチンの追加接種によって、オミクロン株に感染しても重症化を抑えられる可能性があるとして、11月末に全成人を追加接種の対象にすると発表。当初は来年1月末までに追加接種を完了することを目指していた。ジョンソン首相は感染拡大を受けて予定を前倒しし、年内に完了させる方針を打ち出した。