海運部門へのEU-ETS適用、環境団体が「抜け穴」指摘

ベルギーの環境団体トランスポート&エンバイロメント(T&E)は13日、2023年から海運業を欧州連合(EU)排出量取引制度(EU-ETS)の適用対象とする欧州委員会の提案について、小型商船や漁船などを対象から除外する原案のままでは年間2,500万トン以上の二酸化炭素(CO2)が規制されないまま排出されるとの分析結果を公表した。30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するため、規制案を見直して「抜け穴」をふさぐ必要があると指摘している。

EUは50年に域内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げており、30年を達成期限とする目標はその中間点となる。欧州委は昨年7月、中間目標の達成に向けた政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、EU-ETSの改正案を発表。新たに海運業を規制の対象とし、商用目的で乗客や貨物を輸送する総トン数5,000トン以上の大型船舶に対し、EU域内の港湾間を運航する場合は排出量の100%、EU域内と域外の港湾間を運航する場合、およびEU域内の港湾で停泊する場合はそれぞれ排出量の50%にEU-ETSを適用することを提案した。

T&Eによると、世界貿易の約90%を海上輸送が担っており、海運部門からのCO2排出量は全体の約3%を占める。5,000トン未満の船舶を適用対象外とする欧州委案が採択された場合、EU域内を運航する船舶から排出される年間約1億3,000万トンのCO2のうち、約20%に相当する2,580万トンが排出量取引の対象外となる。

ロイター通信によると、欧州委の担当者は適用対象を総トン数5,000万トン以上とした理由について、「海運部門からの温室効果ガス排出量の大部分をカバーしながら、中小企業の負担を最小限にするため」と説明した。これに対し、欧州議会でEU-ETS改革についての議論を主導するピーター・リーゼ議員は、欧州委案をめぐる審議に先立ち、T&Eが提起した問題点について検討していると述べた。

上部へスクロール