加盟国がガス備蓄義務化で合意、11月までに80%達成へ

欧州連合(EU)加盟国は6月27日のエネルギー相理事会で、加盟国に一定量のガス備蓄を義務付ける規則案の内容で合意した。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴いエネルギー価格の高騰が深刻化する中、ロシアが経済制裁への対抗措置として欧州向けガス供給を今後さらに削減する事態に備え、EU全体で備蓄水準を引き上げる。

規則案はエネルギー需要が高まる冬場に向けた対応策として、3月に欧州委員会が提案していた。欧州議会は既に賛成多数で可決しているため、新規則はEU官報に掲載された後、直ちに発効する。

新規則によると、自国にガス貯蔵施設を保有する加盟国は、2022年11月までに80%の貯蔵率を達成する必要があり、1年後には満たすべき貯蔵率が90%以上に引き上げられる。EU全体では今冬に85%の貯蔵率を目指す。

ただし、大きな貯蔵能力を持つ特定の加盟国に過度な負担がかかる事態を防ぐため、備蓄義務は各国における過去5年間の年間ガス消費量の35%を上限とする。一方、自国に貯蔵施設を持たない加盟国に対しては、自国における年間ガス消費量の15%相当を他の加盟国の貯蔵施設から確保することを求める。キプロス、マルタ、アイルランドの3カ国については、他の加盟国のガス供給網と直接接続されていないため、一連の義務を免除する。

このほかエネルギー安全保障の観点から、ガス貯蔵施設運営者に対する認定制度を導入する。貯蔵施設の運営者は施設が所在する加盟国の当局から、自身が域外国の企業であるなどの理由によって安定供給が脅かされるリスクはないとの認定を受ける必要がある。

各国に対するガス備蓄義務は25年12月31日までの時限措置とするが、ガス貯蔵施設の運営者に対する認定制度はその後も維持される。

ロシアは天然ガスの供給を減らして欧州諸国に揺さぶりをかけており、冬場に向けて同国からの供給がさらに縮小する可能性がある。欧州委のシムソン欧州委員(エネルギー担当)は声明で「ロシアはガス輸出を武器化しようとしている。加盟国は結束して迅速に行動し、さらに状況が悪化した場合に備えて備蓄水準を引き上げる必要がある」と強調した。

上部へスクロール