欧州半導体大手のSTマイクロエレクトロニクス(スイス)は5日、イタリアにシリコンカーバイド(SiC)パワー半導体向けのSiC基板(SiCウエハー)の工場を開設すると発表した。欧州で同基板が不足していることに応じたもので、投資額は7億3,000万ユーロに上る。
新工場はシチリア島東部のカターニアに建設する。2023年の操業開始を予定している。欧州連合(EU)が域内における半導体の研究・開発や生産を推進するため2月に発表した「欧州半導体法」に基づき、イタリア政府から2億9,250万ユーロの助成金が交付される。
SiCパワー半導体の需要はスマートフォン、自動車など幅広い分野で高まっている。一方、材料となるSiC基板は米国、アジアでしか生産されておらず、サプライチェーンの混乱もあって欧州では不足している。
欧州半導体法はEUが世界での半導体生産シェアを現在の約10%から30年に20%以上に引き上げるという目標の達成に向けて30年までに官民で430億ユーロ(約5兆6,600億円)を投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押しするほか、有力メーカーの誘致にも力を入れるというもの。
これを受けてSTマイクロは7月、米グローバルファウンドリーズと共同でフランスに回路線幅18ナノメートルの半導体向けウエハー工場を開設すると発表していた。欧州委員会のベステアー委員(競争政策担当)は、STマイクロの伊新工場開設について「欧州の半導体業界は電力効率に優れた半導体向けの革新的な基板の安定的な供給源を確保できた」と述べ、歓迎の意を表明。新工場の製品が電気自動車(EV)やEV充電施設などで活用されるとの見通しを示した。
他社では米インテルが3月、EUの誘致に応じて、総額330億ユーロを投じてドイツ、イタリアなどに新工場を設置する方針を打ち出していた。