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2010/11/5

一般・技術・その他 (旧)

欧州企業のR&D投資2.6%減、自動車とITで大幅に縮小

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会は10月26日、「産業R&D(研究開発)投資スコアボード」の2010年版を公表し、欧州の大手企業が2009年にR&D投資を2.6%削減したことを明らかにした。企業の売上高が […]

欧州連合(EU)の欧州委員会は10月26日、「産業R&D(研究開発)投資スコアボード」の2010年版を公表し、欧州の大手企業が2009年にR&D投資を2.6%削減したことを明らかにした。企業の売上高が10%、利益が21%それぞれ落ち込んだ中で削減率は小幅にとどまったものの、全世界の大手企業の投資額は平均で1.4%の縮小にとどまっている上、アジア各国の企業は大幅に投資を増やしている。このためEUや加盟各国でのR&D投資拡大への取り組みが求められている。

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このスコアボードは全世界の大手1,400社を対象にしたもの。米国企業は2009年に投資額を5%減らしたが、日本企業は売上が約10%、利益が88.2%減ったにもかかわらず投資額は横ばいだった。一方、中国に拠点を持つ企業では40%増えているほか、伸び率はインドで27.3%、香港で14.8%、韓国で9.1%となっている。

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分野によっても違いが大きく、代替エネルギーで28.7%伸びたほか医薬品でも5.3%増えているが、自動車・自動車部品では11.6%落ち込み、テクノロジー・ハードウエア・設備部門も6.4%減っている。

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欧州でみると、ドイツでは3.2%、フランスでは4.5%それぞれ減ったが、これは自動車産業が打撃を受けたため。スウェーデンとフィンランドもそれぞれ6%、6.6%減っているが、これは両国を拠点とするIT企業が投資額を大きく削ったためという。一方でスペインでは15.4%と大幅に増えたが、これは主要大手企業が投資額を拡大したためで各社の伸び率は通信大手テレフォニカが16%、建設・エネルギー大手アクシオナが29%、金融大手バンコ・サンタンデールが18%となっている。

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なお企業別では、2年連続で世界首位となったのはトヨタでR&D投資額は68億ユーロに上る。欧州企業で上位10社に入ったのは3社だけで、独自動車大手フォルクスワーゲンが4位、フィンランドの通信機器大手ノキアが7位、仏製薬大手サノフィ・アベンティスが9位だった。

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欧州委のゲーガン=クイン委員(研究・イノベーション担当)は、「EUの大手企業がおおむねR&D投資額を維持したことは、経済危機からの回復でR&Dの重要性を認識していることを示すもの」としながらも、ソフトウエアやバイオテクノロジーなどでは米国企業との格差が大きいうえアジア各国の企業が急速に投資額を拡大している点を指摘。12月に開かれるEU首脳会議では10月初めに発表した「イノベーション・ユニオン」と題する提案を支持するよう各国政府に呼びかけた。

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