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2011/5/13

企業情報 - 自動車メーカー

VW、MANに買収提案

この記事の要約

欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は9日、独商用車大手のMANに対する議決権ベースの出資比率を従来の29.9%から30.47%に引き上げたと発表した。出資比率が30%を超えたため、5月末にもMANの株主に対し […]

欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は9日、独商用車大手のMANに対する議決権ベースの出資比率を従来の29.9%から30.47%に引き上げたと発表した。出資比率が30%を超えたため、5月末にもMANの株主に対し現金による全株取得を提案する見通し。VWは以前から、同社が筆頭株主であるスウェーデンの商用車大手スカニアとMAN、VWの商用車事業を統合した3社連合の構築を目指していた。MANへの買収提案により同構想の実現に向けて前進することになる。

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ドイツの法律では出資比率が30%を超えると、全ての株主に対し株式買収を提案しなければならない。今回の買収提案は同法律に則したもので、VWは直ちにMANの資本の過半数を取得する意向はないもようだ。まずは、MANの株主総会で過半数を確保し、経営の主導権を握ることが目的とみられている。

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独経済紙『ハンデルスブラット』によると、VWのハンスディーター・ペッチュ財務担当取締役は9日の電話会議で、株主総会で過半数を確保するためにはMANに対する議決権ベースの出資比率を35~40%に引き上げる必要があるとの見通しを示しており、同計画の実現に向けた買収資金は10億~15億ユーロとなるとの見積もりを示している。

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VWは株主に対し現金で議決権1株当たり95ユーロ、優先株一株当たり約60ユーロを提示する予定としており、遅くとも5月末には連邦金融監督庁(BaFin)の許可が下り、正式な買収を提案できる見通しとしている。

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■ 調達や研究開発などでシナジー効果

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VWはMANの買収を通した3社の協力により、部材調達や研究開発、生産におけるシナジー効果を見込んでいる。今後も3社は独立したブランドとして事業を展開する計画で、雇用も確保する意向を示している。

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これまでは3社の提携を強化するとカルテル上の問題が発生する恐れがあった。このため、VWは買収提案を通して3社が協力できる体制を確保する意向という。『ハンデルスブラット』紙によると、下半期にもカルテル庁の認可が得られる見通し。

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ペッチュ取締役によると、VWはMANとの共同調達などを通して、最初の2年間で年2億ユーロのコスト削減効果を見込んでいる。業界では長期的なコスト削減効果が年10億ユーロに達すると見る向きもある。

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乗用車だけでなく商用車業界でも排ガス規制の厳格化により研究開発や排ガス処理システムを装備するためのコスト負担が重くなっていることから、事業規模拡大によるコスト削減効果は大きい。欧州連合(EU)では2013年から大型トラックやバスに、さらに厳しい基準の排ガス規制「ユーロ6」が適用される。同規制に対して各社はすでに対応措置を取り始めていることから、今後は、いずれの技術を採用するかなどについて協議していくことが課題となる。

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VWは現在、スカニアの資本の約46%および議決権の約71%を保有している。一方、MANも2006年に、スカニアの買収を試みた経緯があり、現在もスカニアの資本の約13%および議決権の約17%を確保している。スカニアはブランド力が強く利益率も高いとされる一方、MANはスカニアに比べ販売規模が大きいほか、中国や南米の新興国市場に強いとされている。

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