欧州議会は16日に開いた本会議で、欧州委員会の次期委員長にドイツのフォンデアライエン国防相(60)を充てる人事案を賛成多数で承認した。フォンデアライエン氏はユンケル現委員長の後任として、11月1日に就任する。欧州委員長に女性が就任するのは初となる。
欧州議会の採決は賛成383票、反対327票、棄権22票。フォンデアライエン氏は承認に必要な過半数の374票をわずかに上回り、次期委員長就任が承認された。
欧州連合(EU)加盟国は2日に開いた臨時首脳会議で、今秋に任期が切れるEUの主要ポストの人選で合意した。最大の焦点となっていた欧州委員会の委員長にフォンデアライエン氏を指名した。当初は欧州議会選挙で最大会派となった中道右派・欧州人民党(EPP)が推すウェーバー欧州議員(独出身)の指名が有力視されていたが、フランスのマクロン大統領が資質に欠けるとして反対に回り、調整が難航。最終的に中道右派に属するフォンデアライエン氏が指名された。
同人事をめぐっては、加盟国が最大会派の候補を選ぶという慣例を破り、独仏の主導でどの会派の候補でもないフォンデアライエン氏が急きょ候補者として浮上したことに欧州議会の第2会派である中道左派グループが反発。第4会派「緑の党・欧州自由連合」も反対を表明し、過半数の支持を獲得できるかどうか不透明な情勢だった。承認は取り付けたものの、過半数を9票上回るにとどまり、今後の議会との関係に不安を残す結果となった。
フォンデアライエン氏は欧州委のトップとして、地球温暖化対策の強化や移民問題、米国との貿易摩擦といった難問に取り組むことになる。
目下の最大の焦点となっている英国のEU離脱に関しては、就任前の10月31日が離脱期限となっているが、英国は離脱協定案の議会承認をめぐって揺れている。近く選出される新首相の候補2人はいずれも協定案の見直しを求め、これにEUが応じない場合は英・EUの双方に大きな混乱をもたらす「合意なき離脱」も辞さない構えを示しており、離脱期限のさらなる延期も含めてフォンデアライエン氏の舵取りが離脱問題の命運を大きく左右する事態も予想される。