2010/2/8

競争法

伊エニがパイプライン権益譲渡を提案、競争法違反の制裁回避へ

この記事の要約

欧州委員会は4日、伊エネルギー大手エニが競争法違反に対する制裁措置を回避するため、ロシアや北海から欧州諸国を経由してイタリア国内に天然ガスを運ぶ3本のパイプラインの権益を一部譲渡する方針を打ち出したことを明らかにした。欧 […]

欧州委員会は4日、伊エネルギー大手エニが競争法違反に対する制裁措置を回避するため、ロシアや北海から欧州諸国を経由してイタリア国内に天然ガスを運ぶ3本のパイプラインの権益を一部譲渡する方針を打ち出したことを明らかにした。欧州委はエニの提案が市場に与える影響を分析したうえで、同社に対する調査打ち切りの是非について最終判断する。

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EU域内では2007年7月に電力・ガス市場が自由化されたが、いまだに多くの国で実質的な独占または寡占状態が続いているため、欧州委が域内の主要な電力・ガス会社に対する調査を進めている。

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エニに関しては、天然ガス輸送網の運用にあたり、同業他社がパイプラインを利用できないようにして競争を阻害した疑いがあるとして 07年に本格調査に着手。ロシア産天然ガスをイタリアに運ぶ2本のパイプラインに他社がアクセスするのを不当に制限したうえ、ライバルが競争力をつけるのを阻止するため、これら2本のパイプラインへの投資を意図的に制限して国内向けのガス供給量をコントロールしようとしたと指摘し、09年3月に同社に対して異議告知書を送付していた。

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欧州委によると、エニはオーストリア経由でロシア産ガスをイタリアに運ぶトランス・オーストリア・ガス(TAG)、北海からオランダ、ドイツ、スイスを経由するパイプラインTENPとトランジットガスの3本について、すでに第3者との間で権益の一部譲渡に向けた交渉を進めている。AFP通信によると、売却先としてはそれぞれ伊国営金融機関カッサ・デポジーティ・エ・プレスティーティ、独エーオン、スイスガスが有力視されており、取引額は総額15億ユーロ程度に上るとみられている。

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エニのスカローニ最高経営責任者(CEO)は会見で「当社にとって痛みを伴う決定だが、パイプラインの権益譲渡を提案することが最善の策との結論に達した」とコメント。欧州委のクルース委員(競争政策担当)は「エニの提案は非常に前向きな内容だ」と述べ、「資産構造の改善」に向けた措置を歓迎している。

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