2010/2/22

産業・貿易

スリランカへの特恵関税適用停止へ、人権改善求め6カ月の猶予

この記事の要約

EU加盟国は15日、スリランカに対する一般特恵関税の優遇制度「GSPプラス」の適用を停止することで合意した。欧州委員会は昨年12月、同制度の適用条件である人権に関する国際条約の実施が不十分との報告書をまとめ、スリランカを […]

EU加盟国は15日、スリランカに対する一般特恵関税の優遇制度「GSPプラス」の適用を停止することで合意した。欧州委員会は昨年12月、同制度の適用条件である人権に関する国際条約の実施が不十分との報告書をまとめ、スリランカを適用対象から除外するよう加盟国に勧告していた。スリランカには6カ月の猶予期間が与えられるが、この間に国際法の基準を満たすことができなければ関税減免の恩恵を受けることができなくなり、EU向け輸出の半分以上を占める繊維産業などに深刻な影響が出ることになる。

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GSPプラスは開発途上国支援の枠組みで、人権、労働環境、環境、麻薬対策など27の国際条約の基準を満たすことを条件に、約7,200品目の関税が免除される仕組み。スリランカは2005年から同制度の対象国となっており、対EU貿易で年間1億5,000万ドル相当の関税が免除されている。GSPプラスの適用期間は08年末までだったが、更新に必要な調査が長引き、これまで暫定的に同措置が継続されていた。

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スリランカでは1980年代前半から北東部を中心に居住する少数派タミル人の反政府武装勢力であるタミル・イーラム解放の虎(LTTE)が分離独立運動を展開し、25年以上にわたって内戦状態が続いた。スリランカ政府軍は昨年3月、LTTEの主要拠点を全て奪取し、5月にラージャパクサ大統領が戦闘終結を宣言したが、国連によると、最後の数カ月だけで7,000人を超えるタミル人が政府軍による無差別爆撃で殺害されたとみられている。また、今年1月の大統領選挙ではラージャパクサ氏が再選を果たしたが、政府は今月9日、対立候補だったフォンセカ前軍参謀長を軍法違反の容疑で逮捕するなど、4月に行われる議会選挙に向けて反政府勢力の排除に乗り出している。

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欧州委のデグフト委員(通商担当)は国際条約に沿った人権・人道の改善に加え、司法・行政・警察組織の独立などがGSPプラスの更新を認める条件になると説明。「EUが指摘した人権上の問題の解決に向け、今後6カ月の間に実証可能で持続的な進展がみられることを期待する」と述べた。

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