2010/3/8

総合 –EUウオッチャー

英蘭への預金返済問題が暗礁に、アイスランドが国民投票で法案否決

この記事の要約

アイスランドで6日、金融危機で経営破たんした大手銀行に口座を持っていた英国とオランダの預金者に公的資金で預金を払い戻す法案の是非をめぐる国民投票が実施され、圧倒的多数で法案が否決された。払い戻しが実現しないとEU加盟にも […]

アイスランドで6日、金融危機で経営破たんした大手銀行に口座を持っていた英国とオランダの預金者に公的資金で預金を払い戻す法案の是非をめぐる国民投票が実施され、圧倒的多数で法案が否決された。払い戻しが実現しないとEU加盟にも影響するだけに、アイスランド政府は早急な対応を迫られることになった。

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問題となっているのは、2008年10月に破たんしたランズバンキのネット銀行「アイスセーブ」の預金。同行を国有化した政府が、アイスセーブの外国人口座を閉鎖した結果、英国、オランダ人の総額50億ドルを超える預金は凍結された。この預金を肩代わりして自国の預金者に払い戻した英、オランダ政府は、アイスランドに返済を求めている。

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アイスランド議会は昨年12月末に返済法案を可決した。ところが、アイスランドの国内総生産(GDP)の4割に達する額を公的資金で外国に返済することについて、国民が民間銀行の失態のつけを納税者に負担させるのはおかしいとして反発。これを受けてグリムソン大統領が1月、法案への署名を拒否したため、その是非が国民投票にかけられることになった。

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国民投票での否決は、事前の世論調査でも反対派が大幅に上回っていたことから予想通り。7日発表された最終集計では反対票が93.2%に達し、賛成派はわずか1.8%にとどまった。

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預金返済問題が暗礁に乗り上げたことで、アイスランドは金融・経済危機からの脱却に必要なIMF、北欧諸国からの金融支援が凍結される可能性がある。さらに、EU加盟が遅れることも予想される。EUの欧州委員会は2月、アイスランドとの加盟交渉開始を加盟国に勧告したが、その実現には全加盟国による承認が必要で、返済拒否に反発する英、オランダが拒否権を発動すると見られているからだ。オランダのフェルハーヘン外相は6日、「この問題は、加盟交渉開始の是非を判断する際の材料のひとつとなる」と述べ、返済問題が解決しなければ交渉開始を認めない構えを示した。

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アイスランドは返済条件が法案よりも緩やかになれば国民の理解を得られるとして、国民投票実施の直前まで英、オランダと交渉したが、合意に至らなかった経緯がある。しかし政府は同問題の解決に向けて近く交渉を再開する方針。国民と両国が満足できる条件をまとめることが急務となる。

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