2010/3/22

総合 –EUウオッチャー

欧州委が主要国の財政再建を酷評、景気見通し「楽観的」

この記事の要約

欧州委員会は17日発表したEU14カ国の財政再建に関する報告書で、独、仏など主要国を含む大部分の国が「楽観的な」景気予測に基づいて計画を立てており、財政赤字削減目標を期限内に達成できない恐れがあると警告し、各国に対応を促 […]

欧州委員会は17日発表したEU14カ国の財政再建に関する報告書で、独、仏など主要国を含む大部分の国が「楽観的な」景気予測に基づいて計画を立てており、財政赤字削減目標を期限内に達成できない恐れがあると警告し、各国に対応を促した。

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対象となった14カ国は、ユーロ圏のドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、アイルランド、オーストリア、フィンランド、スロバキアと非ユーロ圏の英国、スウェーデン、ブルガリア、エストニア。

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このうちスウェーデン、フィンランド、ブルガリア、エストニアを除く10カ国が2009年の財政赤字が、EUの財政規律で上限に定められている国内総生産(GDP)比3%を超え、赤字是正手続きを発動されている。これらの国には是正期限が設定されており、主要国では独、仏、スペインが2013年、イタリアが2012年、英国が2014年(14年度)までに赤字をGDP比3%以内に抑えなければならない。

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ユーロ圏の中核国であるドイツの計画では、財政赤字は昨年のGDP比3.2%から5.5%に拡大するが、2011年に4.5%まで縮小し、期限の2013年には3%に収まる予定。その前提となる経済成長率は、2011年で2.0%を想定しているが、欧州委の予測では1.7%。このほかフランス、スペインも2011年の予想成長率をそれぞれ2.5%、1.8%としているが、欧州委の予測を大きく上回る水準だ。欧州委は報告書で、こうした主要国の甘い見通しを「楽観的」と槍玉に上げ、「(財政再建計画が)目標より悪い結果になりかねない」と懸念を表明。2012年までに財政赤字がGDP比3%を超えないのはブルガリア、エストニアの2カ国だけとする見通しを示した。

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このほか欧州委は、多くの国が財政再建計画をさらに具体化することや、追加措置が必要と指摘。例えばドイツに対しては、現政権が打ち出している減税と財政緊縮の整合性が説明されていないことなどに触れ、「予算戦略は赤字削減を軌道に乗せるには不十分」と批判した。

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とくに厳しく糾弾されたのは英国。同国は2009年度の財政赤字がギリシャと同水準のGDP比12.7%まで膨れ上がる見通しで、今年度から段階的に赤字を減らす計画だが、期限の2014年度になっても4.7%と上限を大幅に超えることになっており、財政規律を無視した格好となっているためだ。ユーロに参加していない英国は、赤字削減目標を達成できなくても制裁を適用されないことが背景にある。欧州委は「部門別の詳しい支出削減策がないことが不透明の元凶」と指摘し、歳出削減のペースを強めて期限内に規律違反を解消するよう求めた。しかし、ダーリング英財務相は、欧州委の指示に従って歳出を削減すると再び景気後退に陥るとして、財政再建より景気を優先する意向を表明。欧州委の勧告を「狂気の沙汰だ」と切り捨て、独自のペースで財政再建を進める方針を示した。

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