2010/4/19

総合 –EUウオッチャー

ギリシャ危機再発防止へ財政監視強化、欧州委が5月に具体案発表へ

この記事の要約

欧州委員会のレーン委員(経済通貨問題担当)は16日、ユーロ圏16カ国がマドリードで開いた非公式財務相会合で、ギリシャ危機の再発防止に向けて、各国に財政規律を順守させるための枠組みを強化することを提案した。予算案を各国議会 […]

欧州委員会のレーン委員(経済通貨問題担当)は16日、ユーロ圏16カ国がマドリードで開いた非公式財務相会合で、ギリシャ危機の再発防止に向けて、各国に財政規律を順守させるための枠組みを強化することを提案した。予算案を各国議会が承認する前にユーロ圏全体で審査するなどして、財政監視体制を拡充する。欧州委は5月12日に具体案を発表する予定だ。

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ユーロ圏ではギリシャ以外にも大部分の国で、財政赤字がEUの財政規律で上限となっている国内総生産(GDP)比3%を超えている。とくにポルトガル、スペインなどで赤字が大幅に膨らみ、信用不安がくすぶっている。レーン委員の提案は、ユーロ圏がギリシャ支援を決めたことを受け、これらの国々の危機感が薄れて財政改善を怠るといったモラルハザード(倫理の欠如)拡大を防ぐ狙いがある。

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欧州委はユーロ圏による予算案審査のほか、財政規律を定めた安定成長協定のルールを見直し、規律に違反した国への制裁規定を強化することも検討する見込み。また、ギリシャへの支援は固まったが、他の国でも財政危機が深刻化した場合に備え、恒久的な緊急支援の枠組みを整えることも目指す。

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ギリシャをめぐっては、ユーロ圏16カ国が11日、同国が金融市場での資金調達が困難となり支援を要請した場合の緊急融資の条件で合意。ユーロ圏各国が最大300億ユーロを年利約5%で融資することを決めた。国際通貨基金(IMF)も支援に加わり、150億ユーロを融資する見込みで、支援規模は450億ユーロに達する。

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これを受けてギリシャ政府は15日、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)とIMFに対して、緊急融資の実施に備えた協議の開催を要請。3機関は19日にアテネを訪問し、調整を行う。支援が決まった場合にギリシャに求める追加財政再建策などについて話し合うもようだ。

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ギリシャは13日に実施した6カ月物、12カ月物の短期国債の起債で、総額15億6,000万ユーロを調達した。11日にギリシャ支援の内容が固まったことで信用不安が緩和され、予定の7倍に達する応募があり、発行額を当初計画の12億ユーロから上積みした。ただ、利回りは6カ月物が4.55%、12カ月物が4.85%と高水準で、利払い負担は依然として大きく、財政再建の重しとなっている。このため、信用不安は払しょくされず、一時低下していた10年物国債の利回りは再び上昇に転じ、16日にはユーロ導入後の最高水準に迫る7.36%まで拡大した。

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ギリシャ政府はIMFなど3機関に支援実施に備えた協議を要請しただけで、まだ支援実施は求めていない。しかし、新たに予定している国債発行で順調に資金を調達できるかどうか微妙な情勢で、支援要請は秒読みとの見方が広がっている。

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