2010/4/19

産業・貿易

欧州議会がファンド規制案修正へ、膠着状態打破なるか

この記事の要約

ヘッジファンドと未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンドに対する規制案をめぐり、欧州議会の経済委員会に13日、欧州委員会の原案に大幅な修正を加えた対案が提出された。最大の焦点となっているEU域外のファ […]

ヘッジファンドと未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンドに対する規制案をめぐり、欧州議会の経済委員会に13日、欧州委員会の原案に大幅な修正を加えた対案が提出された。最大の焦点となっているEU域外のファンドの扱いについて、第3国の規制当局に自国ファンドがEUの定める基準やルールを順守しているか監視を要請し、基準を満たしたファンドのみ域内での活動を認めることなどを柱とする内容。経済委は27日に修正案の採決を予定しており、承認されれば加盟国の対立で膠着している議論が一気に動き出す可能性もある。

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欧州委員会が昨年4月に打ち出した規制案によると、域内で活動し保有資産が1億ユーロを超えるヘッジファンドの運用者はEUへの登録が義務付けられ、取引方法、資産価値の評価システム、危機管理システムなどについて定期的に当局の検査を受けなければならない。一方、プライベート・エクイティ・ファンドは保有資産が5億ユーロを超えるファンドが規制対象となり、投資家に業績に関する詳細情報を開示することなどが義務付けられる。加盟国は認可制の導入や情報開示の義務化など規制案の大半の項目で合意しているが、域外のファンドをめぐって厳格なルールの適用を主張するフランスやドイツと、欧州市場で活動するファンドが集中する英国が鋭く対立。当初は3月の財務相理事会で採決が行われるはずだったが、最後まで意見調整がつかず、議長国スペインの判断で先送りされた経緯がある。

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欧州委の原案によると、第3国に登記しているファンドがEU域内で商品を販売する場合、第3国の規制がEUと「同等」のレベルに達していることが認可の条件となる。実際には英国を拠点に活動するファンドの多くがケイマン諸島などの租税回避地に登記しているため、同条項が適用されるとEU内での活動が実質的に不可能となり、英国は金融センターとしての優位性を失うことになる。また、「同等」の定義をめぐっても調整が難航している。

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フランス選出のジャンポール・ゴーズ欧州議員(中道右派)が示した修正案は、EU加盟国と第3国の当局間の合意を前提に、域外ファンドの運用者がEUルールを順守していると当該国の当局が認定した場合に限り、当該ファンドにEU域内での活動を認めるという内容。また、域内の投資家による域外ファンドへの投資も規制の対象となり、テロ資金対策やマネーロンダリングの取り締まりなどが不十分な第3国への投資が制限される。ゴーズ案は第3国を規制レベルによって3グループに分類し、EU並みのルールが整備されている第1グループのファンドについてはEU全域での販売を認める一方、いくつかの点で対策が不十分な第2グループのファンドについては各国当局が個別に認可するシステムを提案している。ゴーズ議員によると、ケイマン諸島はこの第2グループに含まれる。さらに規制レベルが最も低い国は「ブラックリスト」の扱いとなり、域内の投資家はこれらの国に籍を置くファンドを購入することができない。

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