2010/4/19

産業・貿易

銀行課税制度、実施方法や導入時期で合意できず

この記事の要約

EU加盟国は17日開いた非公式財務相会合で、域内の銀行が破綻の危機に陥った場合に備えてあらかじめ銀行に課税する制度の導入について協議したが、課税方法など具体的な内容について合意することはできなかった。経営難に陥った銀行に […]

EU加盟国は17日開いた非公式財務相会合で、域内の銀行が破綻の危機に陥った場合に備えてあらかじめ銀行に課税する制度の導入について協議したが、課税方法など具体的な内容について合意することはできなかった。経営難に陥った銀行に対する救済支援のコストを納税者ではなく、銀行自身に負担させるべきだとの認識では一致しており、欧州委員会が6月までに具体案をまとめる方針だ。ただ、欧州中央銀行(ECB)からは現在検討が進められている金融セクターへの一連の規制との関係性を見極めたうえで、適切な課税方法や実施時期を判断すべきだとの慎重な意見が出ており、今後の調整は難航が予想される。

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欧州委は今月初めに公表した報告書の中で、将来のリスクに備えて銀行のバランスシートに課税するシステムなどについて具体策の検討を進めていることを明らかにした。また欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は16日、選択肢の1つとして各国が金融機関の破綻に備えて基金を創設し、資産や負債規模に応じて銀行に拠出を求める方式を示したうえで、課税制度に対する「各国政府のスタンスを探りたい」と語っていた。

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EU議長国スペインのサルガド財務相は会議後の会見で、銀行課税制度の導入に向けてすべての加盟国から支持を得ることはできなかったと説明。「金融機関が破たんの危機に陥っても公的資金による救済が受けられるとの認識に立ち、過度のリスクテイクに走るモラルハザードを防ぐための仕組みを整えなければならない。具体的にどのような方法を採用すべきか加盟国のコンセンサスは得られておらず、あらゆる可能性を探る必要がある」と語った。同相はさらに、ユーロ圏の中銀総裁と財務相の間に明確な「温度差」があると発言。中銀サイドが高リスク商品を保有する銀行に対する資本要件の厳格化など、金融危機の再発防止に向けた規制を重視しているのに対し、各国政府は危機が発生した場合に銀行を救済するための仕組みづくりに主眼を置いていると指摘した。

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一方、ECBのトリシェ総裁は、2012年から導入予定の銀行に対する新たな自己資本規制(バーゼルⅢ)に触れ、将来の危機に備えていかなる課税制度を導入するにしても、金融機関による過度のリスクテイクを抑制する目的で検討が進められている他の規制案との兼ね合いを考慮して、慎重に実施の方法や時期を決めるべきだと指摘。「銀行の経営再建と景気回復を妨げることのないよう、適切な手順を踏んで総合的に判断する必要がある。中銀からのメッセージは、全体をみて注意深く判断せよ、ということだ」と述べた。欧州委のレーン委員(経済・通貨問題担当)はこれを受け、金融セクターに不必要な負担を強いることのないよう、慎重に具体策を検討する考えを示した。

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